メモ帳

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By 花楠
07-17 00:25

 思えば、引き金を引いたのは、
 その箱を開けたのは、
 私、だったのだろう。

 私には愛した女性がいた。
 君が居てくれれば、他には何も要らない。

 だから私は、私達は、全ての責を捨てて逃げた。
 母で有り、世の理で在る彼女の腕から。


 私と君は確かに愛し合った。
 その証拠が私と君の間に産まれた、可愛い娘という存在。


 然れど彼女には私の抵抗など、ほんの些細な事。

 彼女は知っている。

 私が彼女の元に戻って来る事を。
 私が彼女の忠実なる駒にすぎぬ事を。

 全ては彼女が定めた遊戯。
 逆らえぬ者は皆無。



 そうで無ければ、私の両の手は、
 愛した君の血で濡れてはいないだろう――?


W54S
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By 花楠
07-07 00:29
真っ赤に染まった相棒の姿にイオは息を呑んだ。
普段はネジの二、三本外れた馬鹿な奴だが腕は確かな頼れる相棒。
なのに今日は、今日だけは違う。

追わなければ良かった――。

自分の間違った選択にイオは苛立ちを感じ、小さく舌打ちした。
何も見なかった、そう無理矢理自分に言い聞かせイオは早々にその場を立ち去ろうとした。
が――。

「イオ」
「――!」

唐突に真後ろから囁かれた声にイオは身を震わせる。壁越しに居た相棒はそこには跡形も無く、唯無惨に切り裂かれた《元、人間》が転がっているだけ。そうした張本人は今、イオの真後ろに居る。
何時の間に、そう思うものの何とかこの場を最善に乗り切ろうとイオは相棒の名を呼ぶ。

「……ミルシャ」
「どうして追い掛けて来たの?」
「だってお前が……」
「心配してくれたの? 嬉しいなぁ」

顔は見えない。
でも多分、笑っている。何時もの様に馬鹿みたいに明るく、柔らかく。
そう信じてイオはゆっくりとミルシャと向かい合った。

「ミルシャ……」

違う。
笑ってなんかいなかった。
人形の様に凍った表情。

こんな男、知らない。

「お前誰だ」
「イオ……?」
「俺に触るな!」

己に触れようとした手をイオは乱暴に払い除けた。
その瞬間、銀の瞳が大きく揺れた。

「イオも……ボクを否定するの?どうして、どうして!父さんも母さん達も可愛がるのは……愛するのはX-969だけ。ボクは何でも言う事を聞いたのに……殺せ、て言われたら皆殺した。友達だって好きだった子も!実験も一度も嫌がらなかったし、泣いて父さん達を困らせる事も無かったでしょ!?」
「お、おいミルシャ!?」

また知らない相棒の姿だった。
己の躯を掻き抱き震える様はまるで小さな子供そっくりで。
何がどうなったのかは、イオには全く判らない。けれど錯乱している事だけは、はっきりと判る。

「ボクは失敗作じゃない!だから……お願い否定しないで、処分しないで、愛して……愛してよっ!」
「面倒掛けさせやがって。……馬鹿野郎が!」

乾いた音が響く。

「イ、オ?」

叩かれた衝撃か、ミルシャは二、三度瞬きしたのちぼんやりとイオを見た。

「漸く何時ものお前に戻ったか」
「……ごめん。あの、イオ……ボクが何でも友達でいてくれる?」
「判りきった事聞くなバーカ」
「……有難う、イオ」

その言葉の意味を知るミルシャは何時もの様に柔らかく笑んだ。
W54S
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By 花楠
05-18 01:04
 雨が降る。
 紅い、血の雨が――。

 噎せ変える様な血の香りの中、彼は一枚の小さな肖像画を見つめていた。たった今、亡骸へと変えた兵が落とした物だった。所々擦り切れたそれは、男が大事にしていた証。
 微笑む男と女。女が抱えるのは小さな赤ん坊。
 それが何なのか知った彼は、ほんの少しだけ揺らいだ。


「どうした、ランダーフ。腕の一本でも取られたか」

 細やかなる異変に気付いた甲冑を鮮血で染め上げた騎士は、彼へと言葉を投げ掛ける。

「……否、当たり前だが彼等にも愛する者が居たのだな」

 知らなかった訳でも、忘れていた訳でも無い。唯、深入りしなかっただけ。意識し過ぎた者の行く末は知り尽くしている。

「だから? そんな事を言っているとその内エレナルディアが哀しむ事になるぞ」
「……返す言葉も無い」

 怪訝な翡翠の双鉾に、彼は苦笑した。けれど愛する者と一族の誇りを天秤に架けてしまった己は、何時か彼女を哀しませる。
 無意識の内に、銀鎖の先のロケットに手を伸ばした。

「何時か……何時かお前のその甘さが、お前の命取りになる」
「……だろうな」

 苦々しく放たれた言葉に、彼は薄く笑んだ。
 一呼吸吐き、彼は亡骸に絵を握らせ、小さく十字を切った。

 祈る神は居ない。
 けれど今は、彼等の神に祈ろう。
 死後が安らかであるように。

W54S
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By 花楠
05-15 22:55
ルディア王国の魅惑のお色気お姉さんこと、ルリッドさんは親馬鹿な王佐イルザにメロリンラブなのです。

その事は皆に周知の事実ですが、王国の男性達は不満を感じています。
何故ならお互い全く釣り合って無い上に、イルザがルリッドを欠片も恋愛対象として見ていないからです。
普通の男性ならば、蠱惑的な彼女に言い寄られたのなら即付き合うでしょう。けれどイルザは彼女の誘いを断りました。
そんな事だから、彼等は不満に思うのです。

ルリッドの幼馴染みである、ファルデ卿。
彼もまたルリッドに想いを寄せる一人でした。

「ルリッド。いい加減叶わぬ恋は諦めて、他にもっと良い相手を探して見てはどうだい?例えばぼ…いや、何でも無いよ」
「あらん。イーリア、貴方イルザ様を馬鹿にするつもりなのん?」

彼女の返答に、イーリアは大きく首を横に振りました。

「と、とんでも無いよ!イルザ様は立派なお方で尊敬もしているよ。唯……君を悲しませるのは酷いと思って」
「違うわ、その逆よん。あの方は優しすぎるの……そして、とても淋しい人」

そこまで言うと彼女は、憂いを帯びた表情を一転させました。
何時もの蠱惑的な微笑では無く、それはまるで初めて恋を知った少女の様に可憐に。

「だからワタクシは少しでも良いから、あの方の淋しさを埋めて差し上げたいのよ。出過ぎた事だとは判っているけれども、それでもワタクシは諦めきれないのよ」

それを聞いたイーリアは思ったのです。

(嗚呼、諦めるのは僕の方じゃないか)


W54S
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By 花楠
05-15 21:05

親の名前は知らない。況してや顔なんて。
けれど、その輪郭は何処と無く知っている。

温かくて、優しい日の香り。

多分、母親なんだろう。
笑っているのに、泣いている。


どうしてなんだろう。


W54S
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好きなもの。
By 花楠
05-04 03:02
あのねー。
ルルコナ、いっぱい好きなものがあるの〜。

んとね、
甘いお菓子でしょー、イタズラでしょー。
魔物のお友達と遊ぶのと、お歌を歌うのも好き!

いっつも遊んでくれるイルイルとー、ルルコナが悪いことしたらちゃんと怒ってくれるルーたんに、お菓子を作ってくれるミモールおねーちゃんとミモーラおねーちゃん。色んなこと教えてくれるルリッドせんせーとデルトントおじちゃん。
みんなみんな優しくて大好きなのっ!


でも一番大好きなのはユンユンだよー。

あのね、あのね。ユンユンがルルコナをぎゅーて抱きしめてくれると温かくてお日様の匂いがするの!
ユンユンは頭を撫でてくれるし、いっぱいいっぱい褒めてくれるのー。
それとユンユンはルルコナのママなの。
本当のママじゃないけど、ルルコナのママなの。

ルルコナねー、毎日とっても幸せだよ。

だからね、本当のママとパパ。
もうルルコナにごめんなさい、てしなくて良いんだよ。泣かなくっても良いんだよ。


ルルコナには大好きな人がいっぱいいるの!
W54S
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刺青ロマン。
By 花楠
04-17 21:52
刺青キャラが何人かいるので、把握する為に柄と場所を纏めてみる。


シア⇒蕾の赤薔薇(胸)
クルク⇒逆十字と赤薔薇(背中)
ミルシャ⇒逆十字と紫薔薇(舌)
ランダーフ⇒逆十字と茨(腰)、鷹(左腕)
リシャス⇒鳥(顔の右半分)、鷹(胸)、逆十字と白薔薇(右腕)
シンルゥ⇒逆十字と黒薔薇(手の甲)
ルファナ⇒鳥(顔の右半分)

W54S
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アーヴァイン、リシャス
By 花楠
04-16 00:36
「……」
「な、何ですか先程から。そんなに亜人が物珍しいので?」
「いや、綺麗だなと思ってな」
「は……?」
「髪も瞳も、その肌も全部綺麗だ。見惚れる程に良い女だな、お前は」
「……!」
「好きだな、外見も中身も」
「口先の上手い男は嫌いです」
「おっと。生憎だが、俺は口下手で有名なんだ」
「……。嘘吐きはもっと嫌いです」
「手厳しいな。だがそこもイイな」
「…………」
 

W54S
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ユリア
By 花楠
04-16 00:03
知ってる?

好きがいっぱいになると、
大好きになるの。

で、
大好きもいっぱいになったら、
今度は愛してる、になるのよ。


なんて、子供ぽかったかしら?
やっぱりアタシの性には合わないわ。


けど、それくらいにアンタの事が、好きで大好きで愛してるのよ。
W54S
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ルカっち。
By 花楠
04-07 23:13
中々出番がない彼。
会話のコンセプトは上から目線、そして相手の神経を逆撫でする嫌らしさ。


「神?ボクはそんなモノに頼ったりはしないさ。創っておいて途中で放り出す様なモノに祈る暇が有るなら、他に遣る事何て吐いて捨てる程有るだろうに?何でもかんでもアレにすがるだなんて、全く悪しき習慣じゃないか。……嗚呼、ボクとした事がとんだ失礼を。君はそんな可哀想な自分が一番可愛いと思う生き物だったねぇ」


勇者との会話。
一々長いのが特徴。
W54S
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