月刊 未詳24

2008年3月第12号
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ひびきにあらず
 木立 悟





水の鏡の
光ではないところに
呑みこまれながら
呑みこまれずにいる


ふるえがひとつ
羽につながる
旧い言葉が
水をわたる


樹と樹のはざまを
はざまと同じ滴がすぎる
雪の重みに撓う幹
鳥が生まれる場所を指す


緑から緑へ
ひらめきは消える
無音がひとつ
水底をゆく


果てのむこうへ
水はつづく
はじめての息が
雪に書く文字


遠くも近くもわずかに離れ
鳥は鳥のまばたきを聴く
はざまの滴がひとつ動く
鏡のなかを ひとつ動く










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うで
 ミゼット
てをのばして
のばしてけんを
うちがわにはしるけんを
なかゆびでひく

さんたまりあ、
もうおわかれです

せなかで
ましろいぞうがいう
もりはとてもとてもとおかったの

さんたまりあ、

まっかななまえ

なかゆびでひく
けんを
たましいを
わたしを

しっていた?
わたしのからだは
こんなにもひろいのよ

かがみごしに
ぞうがたおれる

さんたまりあ、

なんてあかいんでしょう

なかゆびでひきよせる
もっとたかくへ
いきを
はいて、はいて

ぞうはたおれて
ためいきをつく
はいて、すって
それでおしまい

わたしはうでを
のばして
けんを
なかゆびでひく

ぞうのゆめからぬけだして
あたらしいみゅーずに
くちづける

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鳥と睡蓮
 丘 光平


 見えない、水に焼かれたおまえには
睡蓮の
張りさける傷は 見えない、

ならば水面で
石になろうという
 高らかに弔うには いちど沈まねばならないからと―


 初めてではない、
その病んだ羽ばたきに 散りしかれたほむらは
やがておまえを刈りとるとしても

聞こえる、ふたつとない
睡蓮の 
待ちこがれた睡蓮の おまえを抱きあげる
 夜明けは 聞こえる―




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夜と布
 木立 悟






多くが壊れ
ひとつ残り
うつろいを生み
栄えさまよう


曇の数だけ夜があり
ひとつひとつの雨のたもと
光は布にひらかれて
足跡のない歩みを照らす


背の花ふたつ
はざま波
坂の下の
海鳥の鈴


持ち替えた楽器に弦はなく
音のかたちの洞をたたく
砂のひと粒ひと粒に
忘れられた雷がある


よろこびの奥によろこびがあり
そのむこうに手のひらがあり
その奥にひとつの笑みがあり
一緒に絵を描こうと言う


たどりつかない虹のまま
花は低い曇から降りる
音の指が踊りのように
海の静けさをなぞっている


枝が枝にこだまする
色はさらに水に近づく
乾くまもなく筆は濡れ
うつろいさまよう唱を描く


雨の数だけ街があり
互いの背の水紋を呼びあう
布は鳥にひらかれて
壊れる前の世界の絵を見る
















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カニバリズム
 藤倉セリ
 

ちいさなひと、ばかになるリズム
カンニバル、カンニバル
ゆがんだひと、ばかになるリズム
カンニバル、カンニバル
さかさまのひと、ばかになるリズム
カンニバル、カンニバル

あたし、しらないひと、ばかになったですカンニバル

美しく忘れる為に
聞こえない耳をください
残らず食べてしまったら
狭い入口から広場に出ようよ
鳴いている鳩を
さみしい指先から溢しながら
追いつかない影を踏みましょう

かつて
あなただったカンニバル
いつか
湯上がりの母がソッと教えてくれたカンニバル
白さを競うように咲いた花は、
喪服の襟元のカンニバル
摘んだ花は全部さしあげましょうね

カンニバル、カンニバル、ばかになるリズム
そのひとは気付かない
知らない顔ばかりが続く葬列が揺れています
ここより先はカンニバル
誰かと誰かが向き合って
変なカボチャを叩いています
カンニバル、カンニバル、ばかになるリズム
仄かに暗い朝には
なにも食べたくなくなります

画像
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 石畑由紀子
 
 
はねた、石は、
水のなかを、水を
大きく、全身でえぐり、ゆれて、水は
痛みで満ちた、が、血は、
流れずに、水のなかを、水の
深いところ、へ、


着席する、石は、
水、ではなかったが、
水を、汚さないので、水は
石を抱いて、そっと、つよく、
さすり、えぐられた感触を反芻、する、
泥の夜、ひかりの、朝、もう
石を、
離さない、


石があって、
完成、となる、

そんな、
わたしの湖、の、





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鳥達の黄昏
 ピクルス
 

冬紅葉の点在する山深く
孵らない卵の無事を祷りながら
死んだ鳥たちが青い空から降りてくる

「きれいなからだの時にもっと」
「若い奴らの指は欲しがってばかりじゃ」

その朝に目覚めなかった者たちの身支度を整えて
夜勤明けの男は黙って爪を切る

「自分の名前が書けます」
「風呂は我慢できるんよ」

葡萄一房が土に還るさみしさ
交わした囁きと
戻ってはこなかった方角
欠けた石を美しく隠そうとする嗚咽

「もう行くのか?」
「すぐに帰りますから」

風呂場まで手を繋ぐ影絵
新しい足袋を揃えながら
萎えた足の意味を考える

「誰も知らんのじゃ」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

山犬の哭き声が
冷めたスープを揺らす
押し黙って身を竦めた人達の眉ばかりが
静かな談話室に並ぶ

「留守番もできます」
「めしもあまり食いませぬ」

古い手紙に許されて
蝉の死骸が灯る夜
あの駅の名前さえ知らず
懐かしい林檎の薫りに寄り添いながら
また鳥が軽くなった



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海と私
 丘 光平


知らなかった
本当のこと
大きなおおきな
海の願い

そして
どんなときも
初めての
出会いのように

海と私は
ひとつになる




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Pic/北城椿貴

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