月刊 未詳24

2009年4月第25号

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辺の音
 木立 悟









すぎるものが
激しく影を投げ捨ててゆく
そのままをそのままに伝えぬための
激しい縦の音がつづく


暗い虫が空を突き
風は夜明けよりもわずかに明るい
光は曇をふりかえる
曇は曇のままでいる


用意は用意されていたか
許しを得ねばならぬものか
許しを得ねばならぬものなら
すべて跳び越え すべて踏み越える


爪で圧せる範囲
爪で隠せる汚れ
呑みこんでいる 冬の原の色
呑みこんでゆく


明るい 冷たい
ひとり 明るい
どこまでも馳せる
ひとりはためく


夜は夜を借りて降り
川の洞のすみ じっとしている
宝石を見つめる宝石
波に残された波の原石


金属の草が擦れあう音
粉なめる猫は人語を解し
だがいつまでも語らぬまま
森のなかの野に踊る


白があり 傾きがある
夜の波に声は混じる
水の羽 水の羽
発ちつづけても波は果てない


縦の音が狭まってゆく
鍵は壊れ 街ははばたく
砂も水も陽も針も
息の時間を見つめている


呑みつづけ呑みつづけ呑みつづけ
流れ去らぬものこそが
常に常に降るものと知る
常に常に忘れ去りながら


紡いでも紡いでもほどかれてゆく
紙をひきちぎる間に消えてゆく
夜の朝 夜の昼
夜の午後に照らされる指


灰が灰を終え
赤を残す
鳥と遊ぶ子
明くる日のうた


糸にくるまれた機械が地にころがる
ひとつの歯車が陽を向いている
壁は木 窓は木
外は木 空は木


踊ることをやめ猫は目をそらす
森の内側にさす影から
右半身だけ逃れている
そびえている 水の音が そびえている


黒はあつまり
まなじりはしびれ
抄いも救いもない手のひらを
音は流れ落ちてゆく


陽の頬が呼ぶ声
金と緑の飾り羽根
晴れと雨のはざまの森を
手のひらは静かに分けてゆく







































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すおう
 ミゼット


沖に向かって手を伸ばすとほら
指の先から何かほどけて

水槽の中で薬浴する
蛍光灯がいやにまぶしい
手袋越しの感触を思い返す

虫に噛まれて腫れた指はほら
ちょうど何かの誓いのよう

逆さまのアンテナ
磁力に引かれて上る風船

シフォン・シフォン
飛ぶ為に重ねて

浜にたなびく鯨幕

空ろな船でも
渡っていける

そういうまぼろし

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冬を臨む
 サヨナラ
 
 
どこか
遠い場所で
雪が降っている

念仏を唱えながら
結晶に押し曲げられた枝
夢の中にしか現れない
暖炉を
思い浮かべて

静かに息をする

鉄柱を懸命にさする姿を
見ている
横殴りの風を浴び
破瓜
どこか
遠い場所で
おこなわれている


排水溝から季節が巡り
私は
田舎の水道水の匂いを
思い出せずにいた

剥がされても
剥がされても



ボロボロだって言ったら
どこまで信じてくれるだろう



小さな小さな
白い粒を
つかの間でいい
指先に乗せ
巡る涙腺へ添わせる
重ねてしまうことを
許してほしい
冬に臨む瞼
きれいに折りたたまれた体
息をしてみても
同じだった




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ひとつ うつわ
 木立 悟







卵の殻が片目に入り
蛾は内から去ろうとしない
眠ることなく
粉に満ちる


雷鳴が
蝙蝠に抜け出る
群れながら群れではない
朝の蒼


誰もついてきてほしくないのだ
いのち止める道のりが
ただつづくばかりなのだから
ひとりを壊し あふれながら


次の冬と次の冬と
次の冬を聴いている
ふたつの粉が向かいあい
粉以外の景がひらくとき


砂が流され
亀裂が現われ
海はひとつの
骨の器の内と知る


生まれる前に終わる息が
片目を空へ触れさせている
通りのはざまを歪めながら
蒼く白く夕暮れは鳴る


粉のはざまに見える声
どれも応えのかたちとなり
見捨てられた荒地から
見たこともない故郷がはじまる


何かを切るたび
冬は回る
片目はまぶしく
浪を呑む


海へそそぐ海を
蛾は見つめる
骨は粉に
粉は骨に応えつづける

























































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未完の、ソネット 「落下」
 望月ゆき


フリーズ、
見たことのない、遠い地で
顔のない男がつぶやいて 直後に 
先端が、わたしの中心を穿つ


貫かれた体内へと
ぬるい、分泌物の侵蝕が始まるのを
指折りかぞえるあいだ、ずっと
魚は うろこを一枚ずつ剥いでいる


はだかになることで、なお
わたしが纏っているものがあらわになり
それしかほかに知らない方法で
求め合い、


水のない夜に、魚と
心中する






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胎動
 凪葉
剥離された/白すぎる
部屋の隅で
わたしが、目を覚ます
張り詰めた決意の、綻び
ゆれて いる
こころさえ
覚束ない
 
 
くりかえされた年月が
与えるのは、痛みで
止めようとした、時間の軸は
空白/の
/ようで
それは夢の/ようで
棄てた両腕に確かめられる
定まらないままの現実
、は
変わらない/変われない

 
常に、うめられている唇/に
触れるものを拒まない
結露して/しまう感情が
手にするものはひとつの、道で
ただひとつ、それだけで
厚く固めた、意識を抜ける
薬だけを
愛して/いる//
 
  
眠りは/隔てなく/孤独、求めた/もの/永遠は、脆く/脆い/ものだから、気付いて/いる/決意、は/重ねること/なのだ/と、

剥がされて/しまえば、すべて
同じ/空も人も地も/愛/ですら/虚、
 
  
突き立てた/高く/誓いを
その切っ先に/わたし/、/を
押し込めた/つよく
印されない、さよなら/
このまま/
口にはしないと、
 
 
星月を
辿る、瞳
燻らす 煙
満たされていく、肺
 
白い壁と、白い扉
白い両腕と、白いからだ
わたしが死んだ、あの日
わたしが生きた、あの日
 
眠り/は

隔てなく
 
 




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pic/北城椿貴


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