月刊 未詳24

2009年11月第32号



2024年04月19日(金)22:03


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冬糸
 木立 悟








舌に 歯に
左目の下に 右胸に
一本の糸が離れずに居り
時々隠れ 時々そよぐ


蝶のかたちの毒が来て
糸の行方を告げてゆく
うたのように終わりはじまり
忘れた言葉のようにまぶしい


雪のなかを
音は到く
光が
丘を落ちてゆく


森が空へ剥がされ
見えるかけら 見えぬかけらが路を暗くする
水を越える小さな影
新たな水になってゆく影


永く遠い幾つもの巣から
金の腕がゆうるりとのび
すべての天窓に書かれる名の上
雨と蝶を連れてゆく


塀の尽きる先
火としじま
樹の胸 冬の目のはざま
蒼を蒼に解く夕べ


灯の失い都市の底の音
洞の奥の奥の音
夜を擦る夜
こがね降らす夜


朝にも昼にも触れてゆく
萎えることのない虚のかたち
海から曇へあおむけに堕ち
音を遠くへ放ちつづける


縦を縦にあおぎみる
水の路を風はなぞる
そよぐもの またそよぐもの
影のかけら 影のまだらを追ってゆく























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冬の舞
 丘 光平


時が
泣いていました、

しずかに開いた薔薇の
 傷口のように泣いていました、


  うずくたびに
 痛みをついばむ痛みが
やわらかな蜜を与えるように

かなしみの他になにも摘まないちいさな手で
かなしみを探しもとめるひとのために 夜空は
燃えていました、りんりんと

火は
雪となり
雪はまた火となって

いつまでも
 行くあてをしらないおさない冬が
  ふりむく間を与えることもなく


 舞いあがる他にすべのない羽虫たちの
おくれ先立つ足もとへ しんしんと降りつもる
青白い灰のために



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夜へ 夜へ
 木立 悟





途切れた道のその先
坂を上りきった場所の空
曲がり角をすぎてゆく陽
曇と 曇ではないものの午後


暗がりのなかの道標が
なかば暗がりになりながら
暗がりの歩みを導いている
みどり死す日に 生まれる日に


雪と陽のくりかえしから
何も無い場所に増してゆくもの
透明のはじまり
瞬きのはじまり


シラブル シラブル スタッカート
彼は何故あんなにも
呼吸のようにうたったのか
ただそのままに 降るままに


土の下の真実を
照らす歩行者の痛みがあり
刺すものを防ぐ外套もなく
こがねの埃をすぎてゆく


会うべくして会ったのか
となりあっただけなのか
蒔くべき道を蒔きながら
彼は水の光に離れていった


人の居ない列車が
騒がしく夜を走り去る
原には灯
やがて冷える灯


何も持たぬものがひとり進みゆく
曇の匂い
雪は消える
痛みだけが残される


かたちのない道標が
ふたつのみどりにはさまれている
滅びながら 生まれながら
次の千年 次の億年を導いている





























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扉が多すぎる
 ミゼット


お前はしろい足を半円にのばして
駆けていった

墓は余りにも大きかったから
墓とは気づかれずにそこにあった

ゲートはそこいらにある
通り過ぎたもの、通らずにきてしまったもの
白夜のうちに振り向くと
ざわざわと打ち寄せて
ぽっかりあいた空洞から
涙に似たものを吐き出す

ねじ切れて
包み
ねじ切れ、
固める
過呼吸のような音

きっと踊りたい
みどりごのようにねむりたい
うでを求めては流れに飲まれる

みえるでしょう、ほら
掲げた心臓のねつ



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秋の砂浜
 丘 光平


華やぐたびに
うすれてしまう
手渡しがたい秋の波間で

みあげた空から
差しだされたざわめきは
ことりたちの行方ではなかった

 ひろげたまま
閉じることをゆるされず
風にちる紅葉のうえに
かさなりあう紅葉の砂浜

そして、打ちあげられた
冬の貝殻 きみは
耳をすませてひとり
海を聞く




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 5or6

引き寄せる畔
銀色の


二つの岩に

膝まで上げている仕草と


水草のような



あの赤い月経の道しるべを知らせた光はあなたの濡れている



あの濡れている
   を



スカーフを解いて見えた鎖骨のくぼみに浮かぶ

靄のかかったような
   を



そこだけ
そこだけ静かだから



ちょうどあなたの
お腹の上で
魚が跳ねたように
魚が跳ねるように
    のように
   を  して
 の中にそのまま
   を  を



畔で解いて



指輪が指先から
擦り抜けて
沈みゆく







あなたと喪に服した



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