月刊 未詳24

2009年12月第33号


2024年04月20日(土)11:39


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 ミゼット
たべもののあじが
わからなくなったことがあった

おさらはどんどんならんでいく
のに
あふれてしまうのがこわかった
のに

わたしのしたは
とうめいになったみたい

ゆめであかいみずたまをみたよ
てーぶるくろすをふぉーくでさすと
わあわあだれかのなきごえがして
むこうのへやからやってくる

オイシイヨっていってみた
ナオッタヨっていってみた
ふくのなかがとうめいになった
でも
おさらはひいた

ゆめのなかはあかいうみだったよ
てーぶるくろすをさがしながら
だれかのなきごえにあわせてゆびをふる


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091224(即興)
 泉ムジ



熱で溶けるチーズの匂いがする、新宿の十字路をランダムに曲がる、約束の時間までまだ2時間はある、君は自転について考えたことがあっただろうか、一日に一度、地球が回転する、というのは間違いだ、正しくは、地球が一度回転すると、一日経つ、私たちが生まれる遥か前から、地面は動いている、足元が定かでなくなる、数え切れない十字を通り抜けた果て、人気の無い路地の深く濁った排水溝に、嘔吐する、酒に酔えるまでまだ2時間ある、溶けたチーズのようにゆっくりと、胃液が粗い金網をくぐり、滑り落ちていく、擦り切れた上着の袖口で口を拭う、都庁に核が飛び込み、一帯は地獄になる、あらゆる建造物は、そう、チーズのように溶け、無様に冷え固まる、ほとんどの人間はそれすら許されない、近い未来にそうなる、今この時、自転がミサイルの弾道に与える影響を計算している人間がいる、膝が言うことを聞かずに折れ、吐瀉物で汚れる、ポケットから携帯電話を取り出し、君に話しかける、君と話すのに、どんなボタンを押す必要も無い、すぐだよ、もうすぐ、2時間経つ前か、後か、何れにしても、すぐ、私は君のように、墓を用意してもらわなくても大丈夫だ、そこに入れるものが無いし、入れてくれる人もいない、都庁を中心に、巨大な十字が描かれる、一日に何時間か、太陽に照らされ、残りは闇に眠る、ボタンを幾つかプッシュする、今日はいけない、風邪をひいたみたいだから、立ち上がるまで2時間もかからないだろう、目についた居酒屋に入り、空の胃袋を酒で満たす、自転よりはやく、すべてを回転させる、君も、私のように飲んだくれていれば良かった、きっと、決して友達なんかじゃなく、星座から抜け落ちた繋がらない星たちのように、存在することで、この後に続く糞みたいな詩篇など吐き捨てれば良かった、私は酩酊した厄介者だ、




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降り来る言葉  XLIV
 木立 悟






闇のほつれが夜の樹となり
蒼を高みへ押し上げている
低い音のあつまりに
音のまだらに震え立つもの


冬を割り
冬を負い
夜の泡が
光を目指し


道の角ごとに
またたく亡霊
剥がれ降るもの
四月 四月


無言の胸を昇り降り
常に起爆の中心に居り
さらに光
さらに光の十二月


つまびきや
かたむきや
花に見えない花にそそがれ
生まれながらにつながりうるもの


やさしくうなづくまぶたの上に
いとおしいいとおしいとくちづける棘
おまえがおまえに流す夕焼け
明けることなど知らぬ夕焼け


鉄が鉄にひらく音
星がそのまま星である音
手のひらを手のひらにひろげても
けして手のひらになれぬ音


ふりかえりつづける瞳の内に
見知らぬ昼の宙宇があり
なにかに接するたびにまたたく
八に輪に背に 鬼の光に


ひとりのふりさえ捨てながら
放つ緑をさらに放ち
くぐれぬものさえくぐりきるもの
冬に削がれ 幸に削がれ


先の見えない昼の道
水を巡る水の暗がり
偽りとほんとうのこがねから
全など無いかのように降る話し声


けだものの火に砕かれた手も
畑のなかに消えた片羽も
虹のはじまり虹の終わり
触れることなく在るものを視る


もうずっと渦のもの 渦のもの
光の枝の足跡のもの
ふいに焼かれる朝のもの
目をふさぐ帯に描かれた午後の景


針もなく布もなく
糸を指で伝えている
とどろきは午後
祭のあとに祀られる面


いつかふたたびはじまる日に
あるはずのないその番号を
わたくしにだけ教えてほしい
盲のまま苦みの海をひらいて
底の底に
できるだけ多くの名前を記すため


はじまりはただ似姿でした
腕をひらいて廻るたび
あなたはあなたでなくなってゆく
無数の扉の
最も奥に立つもののように


すぐ前の
すぐ後のよろこびも忘れている
だからもう一度もう一度
うたってほしいと願い かなえられない


あと一夜
あと一夜と狭まり今日になり
壁や傷や香辛料
いつか見たはずの
笑みの行方さえ思い出せずに


銀に塗られた鉄の橋
ほつれは沈みうたいなじみ
かなえられない願いの終わりに
切られ結ばれ降りつもる
切られ結ばれ降りつもる


























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会話
 腰越広茂

遺影と目が合う
私がまだここに在る
万年筆と腕時計の
青青とした言葉の繁みを
刻みつつ書いて行く時を
その者は、見守っている

いまもなお続く道を。
視線は歩む
心の遺伝子を携えて
終わり無き自問と共に
連ね貫いて 終り無く

死者の声がする
首をかしげて、耳をかたむけて私は。
しんと瞑る先へ
花束を供えた、かけがえのない

裏の林に生えている草木を
縁側より眺めてから
空へと目を配る
ああ、空の色だ
私も息を継ぐ

面影である花と散った雲と星とそれぞれの、
私はささやくように
真っ直ぐに見つめる。
いまここにあるすべてと
ゆらぎをもち
微笑み
交わす
切ない時もあるけれど

玄鳥が、すいすいーーーーっと飛んでいく
秋天をどこまでも



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邂逅 (かいこう)
 腰越広茂

わたしのいない
裏庭に
あなたはたたずみ
目をふせている
どうしようもなく
空は青く
植えた梅が
白く 一輪、

いのりは光によみがえり
幽かにささやく
くちびるは繰り返す
けれど
その白さはいちどきり
かおる予感を
ふるわせる
とめどもなく

梅の実が生った
今年も漬けましょうね
すっぱく
赤紫蘇に染まっていく
おもひ出の重さ
いままで途切れることのなかった
空は青く
あなたが見上げた



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Cry Baby (Good night)
 ホロウ




明け方は残像、未来の癖に思い出みたいな余韻をはらみながら、「見えない壁」のパントマイムみたいに窓の所でこっちを見てる
FMのチャンネルからはハイドン、俺は一気に歳を食ったような気分になり、食卓のトーストはほんの少し焦げすぎていた
イデオロギーのない朝はインスタントで事が足りる、朝刊から拾ったニュースは汚職2、離婚1、死者数6、またかよえっもう、ご愁傷様
玄関を出ると見える近くの山の電波塔、あそこから何かが飛んでいるなんて俺は考えたこともない、需要と供給の関係、アンテナとチャンネルだけの関係
空気は冷えていて肩をすくめる、べつに雨の後ではないのにそれみたいな反射、無数の針で眼球を刺されたみたいで小さくため息をつく
学生たちの自転車はネズミみたい、サラリーマンたちのバイクはドブネズミみたい、程度が下がれば無秩序も常識さ、服着るケモノが繋いでゆく無駄な遺伝子
駅の構内に浮浪者、寒くないのかと気まぐれで尋ねたら、そう思うならなんかくれよとぶっきらぼうに返された、昨夜街でもらってそのままだったピンサロのチラシを渡してやると真っ赤になって怒鳴り散らした、馬鹿にされたくないのならそんな暮らしをするべきじゃない
揺られている、揺られている、揺られていると消化出来ない眠気と朝食で横隔膜から煙があがる、俺が目覚められないせいなのかね、ねえ横隔膜、そいつは俺が目覚められないせいだってお前は言うのかい?降車してコーヒー買ってベンチに座り急いで飲む、タイム・カードにゃこのところ、芳しくない印字が続く
ブートレッグの専門店の、汚れた壁にミック・ジャガー、ヘイ、ヘイ、ミック!「やってみりゃつかめるものもあるかもしれない」って、あれはどれだけ本心なんだ?あんたはいまでもブルースの行先以外にゃまったく興味がないくせに
次の角で曲がらなければ出社出来ない、だけど直線道路の向こうはこの上ないほど魅力的、ネクタイを緩めるか、それとも締め直すか、週に三度は訪れる自問自答、行きたいところに行ったらその分、行くべきところに行けなくなること、これまで何度経験してきた?
タイム・カードは仏頂面でギリギリセーフの時刻を返す、ああ尊き労働、機械までもが病んでるみたい、挨拶をして席につく、近頃ここで流行り始めた俺に関する妙なデマ、生憎ですが皆様方と同じ目線でいさかうほどには、当方時間の空きがございません、お手数ですが他の落度をお当たりください
昼食は悩みもせずにカロリーメイト、ビタミンカロチン食物繊維、山ほど奪ってもしょうがねぇ、惰性で流すに燃やす種など、バランスフードで上等さ、責任持って腹6分目で流して見せましょ午後の焦燥、面白くもないディスプレイ、眺めているうち短い夢を
今何時だろう時計の針を、見るたび死体のヴィジョンが浮かぶ、そいつの顔まで確かめない、確かめたりなんかしないよ、目を見開いて横たわってる、見知ったなりのそいつの顔など
酒が飲みたいわけじゃない、女とヤリたいわけじゃない、薬を買いたいわけでもない、欲しいものなどなにもないのに、賑わう通りで時間を潰す、正気になるのが怖いのかい、よれて汚れた自分を知るのが
駅の構内に朝と同じ浮浪者、俺と目が合うとそっぽ向いて寝たふりを始めた、その仕種に俺はムカついて奴の鼻先へ酒臭い息を存分に吐きかけてやった、少し歩いて振り返ると、奴は声を殺して泣いていた、さすがに少し悪かったと思った
あんなふうに死んでく自分が頭をよぎらなくもない、本当こいつはマジな話で、こんなボンクラいつ弾かれても俺にはちっとも不思議じゃない、ふふ、よう、おい、その浮浪者の顔を確かめるなよ?
シャワーを浴びたら死にかける、消化試合に子守歌はない、それを堕落と言うのならあんたの暮らしを見せてみな、スタンプみたいな笑顔の女が、ペチコートで踊るのを見てた










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