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月刊 未詳24

2010年10月第43号


2024年04月26日(金)00:21


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夜とふたつ
 木立 悟






足踏みの音が
空を動く
少し傾いだ
輪を描く


ふたつの流れ
ふたつの海にたどりつき
海になれぬまま
海を巡る


誰も居ぬ部屋
明かりだけが
明かりを見ている
鏡のなかの 自身を見ている


まばたきのない
まばたきの夜
白になぞられゆくかたち
通りに満ちる 見知らぬかたち


月を見すぎた
窓の左目
痛みと 痛みを映した滴
未明へ未明へこぼれゆくもの


二重三重四重五重
曲線につけられる名としての虹
重さの無いものがたどる路
進む色 こぼれる色を受ける手のひら


うろこ 光
ひらく水音
刺さる 立つ
上下をつなぐ


柔毛と雷光
下へ向かうものらを止めはしまい
かがやきのない熱を呑み
海は海のままに在る


指が指につける色
つまびくように遠のいて
指先の広さの 高い柱へ
雨の上の 上の夜へ


空と水を
暗がりがつなぐ
半分の紙
裏には 霧の絵


やがて夜を継ぐだろう
だが
どの夜にも重ならぬ
幸せではないふたつのもの


緑は静かに白になり
やわらかさを聴き じっとしている
月は空の頂
左目は隠された絵の夢を見る


さまようしるべの声は低い
道とは何かを 知らぬものの地図
ふたつの手のひらに
照らされてゆく




































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秋の日
 田中智章


(異様な音)
触れることで繋がり、(すなわち離れ、)
空白になる背後、
ほと息を吐く。離れる。つづき。
軒先から身を離す水から
空までの道のりと。
振動の上に振動が置かれ、
しかし互いに距離は保ったままで、
落下する方が判らないまま静止している。
鍵を開けると羽ばたいて行ってしまった、
雲の縁のような暗さがたなびき、
人のかたちになって陽を浴びる、
雪のごとき融解。走り抜ける痛みで霧散する、
理のこわさをばらばらにして、
雲と混ざりゆっくり流れていった、
(私が流した)




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濃い森、雨
 上原楽恵

てっ、てっ、てっ、
沖合いから、血の雨雲
降り始めて、初めて、それが鋭い鉄、
器と気がつき
受けとめる、て、つ、
てつ
鉄、、鉄だ、、、
鉄の匂いがする
首をまわして森の外を伺う
動悸が速くなる、生き延びたい、優しい声にも騙されてはいけない
近づいて来るものは虹でも光でも、、、 
なかった
悲惨だ

森に逃げよう
山羊も緑色の匂いのする虫もガジュマルの小さな、、、娘たちも
ある朝、突然、死んでしまう
雨のようにやってきた
小道の道先を炭で黒く塗りつぶされ上空からも待ち伏せされている

夜のうちは巨人の足音、、、
のせい、、、
沿岸では波が高まり嵐が迫っている
、、、目を閉じ、、耳をすませて、、肌と産毛だけで総立ち、感じとる
息子よ、生まれたばかりの
思い出せ、私の血
動脈が流れ去る速さで
近づいてくる風のこえ
周辺に円を描いて、中央に集まるのは危険だ
森はどれほど濃くても、小さな島ではすぐに狙われてしまう
隠れたつもりで、外からは丸見えなのだ
孤島の小高い丘に、森
住民はみなそこに集まっている
、、、

ーー
ーーーほら、降り始めた
火の満ちた庭先で解体が始まる
喉を掻き切られ血しぶきがあがる
男が若い女を赤ん坊が泣く母親を船が戦闘機を蛇が豚を国を守る兵隊が民間人を歩けない老人もナイフ、銃が無ければ石や木の枝で殺した
少女である
私は友を殺す
敵の手にかかるぐらいなら自決セヨ

昨夜みた夢の話ではない、、、
「後世に敵側の公文書では集団自殺と記録される」
空から落ちてくる
「太陽を信じられない者は、裏切り者だ」と書いてあった
紙の束で叫んでいる
すぐさまそれをひろいあげ
目を開けない前に書き写す
明け方
記録ではうんめいの朝に





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泡沫
 腰越広茂

連れ去られた声共々
水の惑星の底の無い墓標で
ゆらゆらと陽炎に
あいさつをするのが日課になってしまい
本日の公園は万有引力の縁の下
ここぞとばかりに
下弦の月はそり
青く冴えかえる
ふしめがちなおもい出の
こぶしの中には宙がひとしれず
黙礼をする真夜中すぎ
予約席は不在のままにて
直立する回旋塔がわたしたちを
葬送してくれる
岩船に花の咲いて
泡影は写真に焼かれてゆく
誰にも観賞されず
ひとりきりで
わたしたちを遠望している
サイレント航行は
いつまで続くのだろう

青鬼灯を持ったかなしみの
しろいくびすじを青白く照らされ
ほっそりとかしげたまま
庭先にたたずんでいる
下弦にうすい微笑を浮かべ

その場から、はなれたのだ
自分からは逃れられないというのに
さまざまな可能性のある
内にある歪な種子への恐怖のために
連れ去ったのはなにもの

この世でいちばんこわいのはわたし自身か
しゃぼんだまをとばそう
虹色に輝く



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不季途
 木立 悟









暗がりを作る小さなものを
目をつむり見つめる
どんなかたちも妨げない
光の矜持がある


よびさます きざまれる
ふりまかれる こがねでもあり
みどりでもあるもの
けだものの 足音


降るものに向かい
昇るものがあり
すれちがうばかり
まばゆいばかり


足跡を追い
足跡はつづき
波が運ぶ鈴
陸をふちどる


ひとりにみどり
わたすともなくわたされて
ひらくことがこわい子は
もうひとりの子の手のひらへ


水紋をめくるとすぐ下に
異なる別の水紋があり
重なり 布になってゆく
縦の水になってゆく


目をあけること あけないことのはざまから
離ればなれのみどりが生まれ
夜のこがねをさがしにゆく
夜のこがねを さがしにゆく

































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