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別冊 未詳24

短歌・俳句・川柳

※投稿作品は五首(五句)以上でお願い致します
(連歌形式である必要はありません)
(首題は任意です)


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解と業
 木立 悟







触れられぬ光のようにそばに居るそばに居るのに遠い宝石




濡れ髪をそのままにおく季のうちに夜の声きく朝の声きく




灰という名の舟のどに羽ばたかせ応えゆくもの彷徨えるもの




夜の樹を見るたび毒はうたいだす昇るまぼろし遠いまぼろし




白い火がまぶたの肉を越えてくる見ても見なくても白い静けさ




雨の指ことごとく夜あつまりて雨のよこ縫う雨のたて縫う




暗闇が棄てた硝子に触れたとき暗闇もまた棄てられたと知る




頬かむり虹の風のなか燃え上がり出会いさえ無い生き方もあり




けだものの爪先かかと駆け上がり土の花が早や空の花となる




祝祭は常に廃墟と隣り合う境いめの無い境いめのうた






























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めぐり ひびく
 木立 悟











忘れては夏の水底のぞきこみまばたく広さまばたく遠さ



無音から無音に至る無音には尽きた灯の色ただ打ち寄せる



激しくも涼しき雨を走り抜け糸ぬぎ捨てる人ぬぎ捨てる



丘を呑み夜の呼吸を聴いている雨の時計の止まりゆくころ



しずかな穂しずかなむらさき金になり低い森へ夜へ流れる



どこまでも悲しい子の手を引いてゆくどこまでも花どこまでも花



陽の音が雨の上から降りおりてひとつの花をめぐり響く日

















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Sale(Final)
 宮下倉庫



射精にも似た航跡を指で追いピスケスを駆る空軍を呼ぶ


言うなれば必敗 7月の高低はどちらに集うかまだ分からない


遠雷に詰まる車間を右がわに誘う蛾を追う車列には雨


鉄道が連結を跨ぐ筆圧に挟んだ指よ血豆をつくれ


果物を腐るに任すその奥は身じろぐ虫に届く夜の手


Me and Judy wake up, sucking a lemon, with droppin' into proof of color.


停泊は)呼声を許し 星と窓伝いに落す 投錨の文(あや)


牝山羊の背中を摩り地下鉄は上りも下りも間違えている


置き傘のないに気付いても引き返す 返る踵に引きずられるまま


車座の宦官は太りその先は見えないままに明け暮れる室



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無のあとに
 木立 悟







手のひらも夜もはざまも降りそそぐ漂う紙の大陸を踏む




わたしゆえ突き放された時の色たとえようとし止めた日のこと




たくさんの懐かしき文たなびいて涙なき影切り刻む昼




夜の火が骨の樹の原とおりすぎ銀に照らされ銀の子を産む




誰も居ぬ場所には多く声が居て切れぎれに問い切れぎれに請う




いつまでも無くならぬもの消えかけてまた現われてまた消えてゆく




ひとしきり影は影打ち降りやんで地より少ない空あおぎ見る












































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六月のBGMはレット・イット・ビー
 吉田群青
 


缶切りで鯖味噌缶を開封し背中まるめてわぶわぶ食べる

薄荷飴ひとりで舐めてさびしがる君のことなど想ってみつつ

朝刊の明朝体が目に刺さる夜明けどこかで鳥が鳴いてる

晴れた日の午睡が好きだ悪いことしてるみたいで欲情しちゃう

脈はかるこんなに空が青いから生きてることを忘れそうだよ

ぽったりと路傍に咲いたあじさいは女の乳房のかたちをしてて

夕暮れを少し盗んでポケットに入れてそのまま失踪しようか

広告の裏に自画像かいてみるなんだかひどく歪んで見える

街の灯が咲くころ夜が遠くから押し寄せてきます海のようです


 


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緑応
 木立 悟






月の横さわりつづけるまぶたかな



まぼろしを捕らえ離さぬ冬の蜘蛛



どこまでも何も無い部屋ひびきゆく



おまえにはおまえの音叉つき刺さる



覚めるとき指をしたたる光かな



霧の骨曲がり角なお曲がり角



色の失い輪が春の腕しめつける



消える日に生まれるものをひとつ足す



居りました光は蒼く居りました



降る雨と降らぬ雨抱く緑かな





















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〜空色のペディキュア〜
 蜜柑

*「どんなでもおまえはおまえだろ」なんて淋しさばかりくれながらいう


*きらきらとしてないものも大切で もう唄わないオルゴールの中


*サクラチルチルチルミチルナミキミチ ハナビラミチルトリカゴノナカ


*青空と東京タワーで結ばれて春の光を身ごもりました


*O君に告白してたKちゃんの頬の色したリップを買いに


*大丈夫。あれこれそれも〜オハナシ〜と呼べば仔猫の昼寝の温度


*霜柱トクンてのんだら芽吹いたわ(植物図鑑は開かずにおく)


*「一人でも歩き出せます」桜色したパンプスは鑑定書付き


*傷ついた傷つけあった胸からも 零れるものはきっとハナビラ


*ひき算の答はやがてうららかに。空のカケラのようなペディキュア


 

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ミート・ミー
 宮下倉庫



三塁に羊はいないだがあれもなにかの犠牲ではあるだろう



チケット袋をくれよ ほらあれさ ジッパーで留め数字で止め 


祖父は山にリサイクルに祖母は川に投薬及び産土をしに


オーブンに頭突っ込み2分半 どこまで焼けた? 脊椎は まだ


建築にぶつかり傾ぐタイタニック 船尾から投げる処方箋の束


死亡届の裏側に出生のそれ 居間を挟んで 食卓 便所


リサイクルの端緒に付いたところだ ターン ターン 繰り返す ターン


傘、させよ 命を懸けるほどでもない トタン 雨垂れ 霊柩車 肉


ふたご座のAB型のホルモンで さあ焼かないかブルブルホモかッ!


「炊飯!」で飛ぶ成龍の肋骨の周りの肉を師父が食う


牛肉が炙られて反る 恐らくは呆然と これは殉教者かい


献立表 ご飯 味噌汁 獣肉 時計仕掛けのオレンジひとつ


ご注文は? ワッパー ペプシ タマネギ弾 びびるなこれはただのランチだ


ロブスターみたいに腰のとこで千切る 悪い 恥骨がひどく痒いんだ


もし君が篤志家ならばまずgunをbunsで挟め そしてふるまえ


内臓が飛び出していく アテンション 間もなくおれは骨付きの肉


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早春、早朝
 松原なぎ
 

ずいぶんとしずかで雪が降ればいい夜だったハッピーバースデイ

タートチカ、寒いねえって手をにぎる雪がとけちる水面のしたで

生野菜かじれば雪が谷にふりなんにもなかったように笑える

好きだから仕方なくてもいいわけはあるはずもなくひとりで帰る

滲むのでわかったような気になった涙から咲く六花 さむいね

わすれちゃえってみんな言う、もう君もわすれましたかふたりぬくもり

なんらかの末期こんなに泣くなんてそれを見せたいだなんてまるで

ミルキーの味になりたいけものがれ、あたたまらない両脚を喰え

もうさみしくないよひとり砂浜をあるけばごほんごほんの指です

永遠のパンわけあえばへだたりは遠くて近いいつもさみしい

つまさきをうんと伸ばして抱きあってジャーンプインザみずうみみずうみ

 

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冬躄
 木立 悟












じゃんけんに勝っても屑に生まれ来る



しゃぼん玉まだ見ぬ原へ消えてゆく



少女には明かされぬまま冬の蛇



音を見る瞳吸い寄せ鈴の色



神の手に神が居ぬ日の夜明けかな



時の音闇の音ただ連れ去りぬ



水にさえ弾かれひとり夜に立つ



月を呑み月を吐きつつ夜をゆく



けだもののかたちのしゃぼん手に吼える



どこまでも扉なき夜ふるわせる
























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イラスト/ピクルス
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