エターナルゾーン日記板
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ーーーーーーーーーーーーー 崖下から吹き上げる風が、埃と血の匂いを運んでくる。 落下するエマラの身体を抱き止めた男を見た瞬間、レインは目を見開いた。 「マー...サル?」 震える声でエマラが呟く。 男――マーサルは、抱きかかえた姉の顔を見て、どこか困ったように笑った。 「わりい、姉ちゃん」 その声には、長い年月の重みが滲んでいた。 「随分と遅くなっちまった」 「まさる..!」 レインの顔にも安堵が浮かぶ。 だがエマラだけは呆然としていた。 「どうして..」 「すまねえ、話は後だ」 マーサルはすぐに表情を引き締める。 そして振り返った。 「おい、レイン!」 「!」 突然呼ばれ、レインの肩が跳ねる。 「姉ちゃんを連れて逃げろ! あとは俺がやる」 「う、うん! 大丈夫なの..!?」 不安そうなレインに、マーサルは鼻で笑った。 「誰に言ってんだバカ!」 その顔は昔と何も変わっていない。 「..まかせたぞ」 短い言葉だった。 だがそこには確かな信頼があった。 レインは強く頷く。 その様子を見ていた男が、不快そうに肩を竦めた。 「商品に傷をつけるところだった。 礼を言うぞ、小僧」 マーサルの目が細くなる。 「おいおい」 腰から短剣を抜きながら、一歩前へ出た。 「誰が【商品】だって?」 「フフフ..」 男は醜く笑う。 「あの女に決まっておろう。 もっとも..既に使い物にはならんがな」 下卑た笑い声が響く。 「がはは..!」 その瞬間だった。 マーサルの目から笑みが消える。 「..汚ねえ口だな」 短剣を静かに構えた。 「それにくせぇ」 嫌悪を隠そうともせず言い放つ。 「すぐに閉じさせてやるよ」 「..くさいは余計だ!!」 ◇ 一方その頃。 瓦礫の広場では、グルンガとピエトロが対峙していた。 「お前、何者だ」 グルンガが低く唸る。 ピエトロは穏やかな笑みを崩さない。 「ただのしがない年寄りでございます」 次の瞬間。 「..よっ!」 指先が弾かれた。 その直後には、グルンガの腹部へ鋭い蹴りがめり込んでいた。 「うおっ!?」 咄嗟に腕を交差させる。 衝撃に押され、数歩後退した。 「..くっ」 地面を踏み締め、体勢を立て直す。 ピエトロは懐から小振りな弓を取り出した。 「さて..やるとしますか」 「ふっ..舐められたものだ」 グルンガが牙を見せる。 「そんな弓で何が..!」 その時だった。 空気が微かに鳴る。 ピッ。 「なに!?」 頬に熱が走った。 血が一筋流れ落ちる。 「矢が見えん..!」 ピエトロは楽しそうに目を細めた。 「ほほ..凡人には見えまいて」 さらに弦が鳴る。 「それそ〜れ!」 「ぐおっ..!!」 次々に襲う衝撃。 グルンガは舌打ちした。 (くそ!速すぎる..!) 「これはこれは」 ピエトロは肩を竦める。 「期待外れでしたかな...?」 ◇ その頃、リッカは地面に横たわっていた。 「この私があんな単純な手に..」 眉間を押さえる。 「最悪..」 「あっら〜ちょっと大丈夫〜?」 聞き覚えのある声。 リッカの目が細くなる。 「別に、なんでも」 (こいつは確か..) 酒場で見た大男。 間違いない。 「あちき目は見えなかったケド」 男はニヤリと笑った。 「アナタのニオイ覚えてるわよ〜?」 ぞわりと悪寒が走る。 「100倍にして返してやるぜ」 リッカは即答した。 「サイアク...」 ◇ 「キースちゅわ〜ん! これ、手土産よ〜ん」ルンルン 「おえ..」 キースの顔が露骨に歪む。 「ああん?」 大男が睨む。 「いやなんでもな..さ、下がれ」 「?変なキースちゃん」 首を傾げる。 「はいはい、ばいび〜♪」 扉が閉まった。 キースは深いため息をつく。 「はぁ...誰だあんなやつ入れたの」 床に転がるリッカへ視線を落とした。 「あんなのにやられてお前も可哀想な奴だよな?」 肩を揺らして笑う。 「はは、気絶してちゃ何も聞こえないか」 当然、返事はない。 「さて」 キースは立ち上がる。 「あとはピエトロに任せるとするか」 扉へ向かいながら振り返った。 「そこで寝てな。 なあに、後でじっくり可愛がってやるさ」 扉が閉まる。 静寂。 数秒後。 リッカが片目を開けた。 (やっと行った...) 大きく息を吐く。 (は〜、やられたふりも結構キツいわね) ゆっくりと起き上がった。 「で..ここはどこかしら..」 周囲を見渡す。 「えらく静かね。 それに暗い」 口元に笑みが浮かんだ。 「こうなったらとことん調べてやるわ」 ◇ 「エマラさん、走れる!?」 レインが振り返る。 だがエマラは苦しそうに首を振った。 「ごめんなさい...私の足は..もう」 「だったら!」 レインは迷わなかった。 エマラを背負い上げる。 「!」 「意地でも..運ぶんだ..!!」 必死に走る。 荒い呼吸。 震える足。 それでも止まらない。 背中のエマラが小さく呟いた。 「あなた一体..どうしてそこまで...」 レインは前を向いたまま答える。 「まさるが..ずっと言ってたんだ」 脳裏に浮かぶ親友の顔。 「家族に何かあったら..きっと自分を一生許せないって..!」 「..!」 エマラの瞳が揺れる。 「そんなっ..!こと言ってたまさるが!」 レインは声を張り上げた。 「僕にその家族をまかせたんだ!」 握る拳に力が入る。 「だったら僕は..約束を守らなくちゃ!! エマラさんを絶対に守るんだ!」 「.....」 エマラは黙っていた。 ただ、その目はどこか優しかった。 「はあっ..はあっ..」 レインの呼吸は限界に近い。 しばらくして。 「レインくん..だったわね」 エマラが静かに言った。 「もういいわ、下ろして」 「え..っ!?」 レインは戸惑いながらも膝をつく。 エマラが地面へ降りる。 「う...」 傷ついた足が潰れた土を踏む。 「何してるの!?」 レインが慌てる。 「エマラさんの体はもう! それにまさるは逃げろって..!」 エマラは首を振った。 「マーサルは..弟は私の」 胸に手を当てる。 「大切な..大切な家族なの」 震える声。 だが瞳には強い意志が宿っていた。 「その家族に何かあったら私は..」 拳を握る。 「死んでも死にきれない..!!」 「!」 レインは息を呑んだ。 エマラは微笑む。 「レインくん..考えがあるの」 そして静かに手を差し出した。 「..お願い、協力してちょうだい」 レインは迷わず頷いた。 「..うん!」 ーーーーーーーーーーーーー
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