エターナルゾーン日記板
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ーーーーーーーーーーーーーー ディーティーの身体がゆっくりと崩れ落ちる。 胸元から溢れる血が地面を濡らし、その顔からはみるみる血の気が失われていった。 「ディー..ティー」 エマラの震える声が漏れる。 「そんな...ディーティー。 私..あんなに酷い事言ったのに。 どうしてっ..」 涙が止まらない。 彼を傷つけた。 突き放した。 それなのに。 それなのに――。 ディーティーは苦しそうに笑った。 「泣くなよ、エマラ」 震える手が彼女へ伸びる。 「ろくに悪口も言ったことないのに..。 何か事情があったんだろ? それくらい俺にもわかる..くっ」 「ディーティー!」 マーサルが叫ぶ。 「ディーティーさん!」 レインも駆け寄った。 だがディーティーの様子は明らかにおかしかった。 全身が痙攣し始めている。 「なんだ貴様は!?」 敵の男が顔をしかめる。 ディーティーは苦しげに息を吐いた。 「どうやら俺も..そっち側になるようだな」 その言葉に場の空気が凍りつく。 「ディーティー!しっかりして! ディーティー!!」 エマラが必死に肩を揺する。 しかしディーティーは頭を押さえた。 「声が..声がする! まるで頭が..割れるようだ..!!」 「ディーティー!!」 エマラの叫びが響く。 レインは呆然と立ち尽くした。 「あ....」 男が膝をつく。 「ぐ..血を出しすぎたか」 ガクッと身体が揺れる。 だがレインの目にはもう映っていなかった。 「ああ...」 目の前で。 また誰かが壊れていく。 「ディーティー!しゃきっとしろよ! そんなんじゃ俺は認めねえぞ! おい!」 マーサルの声にも焦りが滲む。 だが。 レインの中で何かが切れた。 「あああ..」 男が笑う。 「一人でも多く殺してやる..!」 「レイン!!」 マーサルが振り向く。 次の瞬間。 「あああああああああああああ!!!!!!」 絶叫が夜空を引き裂いた。 空気が震える。 地面が軋む。 マーサルの背筋に冷たいものが走った。 (こ、これはあの時の..!) レインの身体から禍々しい気配が溢れ出していく。 「あああああああああああああああ!!!!!」 男も顔色を変えた。 「なんだこの感じは..まるでこれは..!」 全身から汗が吹き出す。 (いや、イビドゥーカー様よりも禍々しい..!) そして。 レインがゆっくり顔を上げた。 口元が歪む。 「やーっと戻れたぜ..」 その声はレインではなかった。 グチャッ!! 「ーー!なっ..う、腕が!!」 男の右腕が吹き飛ぶ。 何が起きたのか誰も理解できなかった。 「なあ」 レインは千切れた腕を拾い上げる。 「自分の腕で殴られたことあっかー?」 ドカッ!! 「ぎゃっ!!」 腕が男の顔面に叩きつけられる。 骨が砕ける音が響いた。 「ねえのか? 早く答えろよ」 「あが..が..っ。 や、やめ..」 レインは鼻で笑う。 「もういいや」 グチャッ。 沈黙。 男は二度と動かなかった。 その光景を見てエマラが顔を青ざめさせる。 「ひ、酷い...」 「はっ!」 レインが振り返る。 「酷いだと? テメェの方がひでえことされてんのに、お気楽なもんだな」 「お前は..一体..!」 マーサルが睨む。 レインは肩を竦めた。 「へっ。 どうしたよ、傷だらけじゃねえか。 今のテメェなら簡単に殺れるぜ」 「レインをどうした.. レインを返せ!」 「はいはーい。 レインは俺でーす」 「ふざけるなっ!!」 その時だった。 「..悪しき心」 ディーティーが苦しそうに呟く。 「そうか」 誰もが振り返る。 「おかしいとは思っていたが.. ザインでの出来事。 レインくんに住み着いたお前のせいだったということか」 「!」 エマラが目を見開く。 レインは舌打ちした。 「おーおー言ってくれんなぁゾンビさんよぉ! こいつは元々俺の..ぐうっ!?」 突然身体が震える。 (やめろ..! 僕の体だ!) 「チッ..またかよ」 レインが頭を押さえる。 (テメェは黙ってろ!) (黙らない..! 渡さない..!) 「!?」 ディーティーの目が見開かれた。 「感じる.. レインくんは今まさに奴と戦っている」 「ぐぐ!」 レインの身体が激しく震える。 「レインくん!」 「レイン!」 「ぐああああああ!!」 悲鳴。 絶叫。 苦悶。 そして。 「はぁ..はぁ..」 ゆっくりと。 レインの瞳が元の色を取り戻した。 「ぼ、僕は一体..」 誰も答えられなかった。 エマラは涙を流していた。 マーサルは拳を握りしめている。 ディーティーだけが静かに微笑んでいた。 だがその時。 「うっ!!」 ディーティーの身体が大きく揺れた。 「ディーティー!」 「ああ..大丈夫だ」 苦しそうに笑う。 誰の目にも分かっていた。 もう長くない。 「ね、姉ちゃん..ディーティー」 マーサルの声が震える。 「そんな顔するな..マーサル」 「俺のせいだ」 拳が震える。 「俺に力がないから..ちくしょう! これじゃ..何にも変わってねえじゃねえか..!」 「マーサル..」 「ようやく救い出せると思ったのに..! やっと追いついた..それなのに!」 ディーティーは静かに首を振った。 「もう、時間がないようだ..」 夜風が吹く。 「俺の体ももうすぐ生きた屍となる。 そうなれば...人を襲ってしまうかもしれない。 それだけは避けなきゃならない」 「それってどういう..」 レインの問いに。 ディーティーは穏やかに笑った。 「元よりザインを出た時点で俺は僧侶失格だ」 「....」 「最後の魔法...リバーサーを使う」 「!!」 マーサルが顔を上げる。 「まさか自分に使うことになるとはな..」 「リバーサーって..」 レインが呟く。 マーサルが答えた。 「ゾンビ化した人間を.. 居るべき場所に還す魔法だ」 静寂が訪れる。 ディーティーはゆっくりエマラを見た。 「エマラ..」 「..!」 「....綺麗だな」 優しく微笑む。 「ちっとも変わらない」 エマラは答えられなかった。 涙が溢れて止まらない。 言葉にすれば、 本当に終わってしまう気がした。 「約束。 守れなくてごめん」 震える声。 「さよならだ」 「..たしも..」 「..?」 「私も...逝くわ、ディーティー」 「!」 マーサルが立ち上がる。 「何言ってんだ姉ちゃん!」 「私だってあいつらの監視から外れたのよ... いつ暴走してもおかしくはないわ」 「それは..」 「マーサル」 ディーティーが静かに言った。 「エマラは本気だ.. 俺達じゃ止められない」 そして苦笑する。 「まったく、女は強いな..」 エマラは涙を拭いながら微笑んだ。 「ディーティー..これ。 つけててくれたのね」 「僧侶の修行は金属を嫌う」 胸元の小さな指輪に触れる。 「でも俺はずっと身につけていた」 優しい目。 「..君もだろ」 「うん..つけてる」 「想い合ってた..」 「うん..」 「もう..お別れだよ」 エマラは頷いた。 そして。 「マーサル..こっち来て」 弟を呼ぶ。 マーサルは涙を堪えながら歩み寄った。 「....」 「姉として.. アナタに言えることは1つ」 エマラは優しく笑う。 「....家族を。 みんなを頼んだわよ...」 「分かってる..!」 「出来ることなら.. 大きくなったシービィとジービィを見たかったなあ.. お母さん..怒ってるかなあ」 「....」 「それと..マーサル」 「?」 「お父さんを恨まないで」 マーサルは俯く。 長い沈黙。 そして。 「うん..分かった」 エマラは涙を浮かべながら笑った。 「お姉ちゃんの言うこと..聞けるわね?」 「聞ける」 「頼もしくなっちゃって..この!」 額を軽く小突く。 昔と同じように。 「じゃあね..愛してるわ」 ディーティーが目を閉じる。 「...を聖なる地へと誘いたまえ.. エマラ」 「..うん!」 涙声の返事。 そして。 「...リバーサー!」 光が溢れた。 「姉ちゃんっ!! 姉ちゃん..!!」 マーサルが叫ぶ。 エマラは最後に微笑んだ。 「マーサル.. アナタなら正しい方向へ進んでくれる。 私はそう..信じてる」 「エマラ..好きだ」 「私も好きよ..ディーティー」 二人は見つめ合う。 「これからはずっと一緒ね」 光が優しく二人を包み込んだ。 その先に。 誰にも見ることのできない未来があった。 (子供の名前は..うーん) (もう、気が早いわよ) 懐かしい笑い声。 (でも、そうね) (俺達の子供) (名前は..) 光の向こうで。 二人は確かに笑っていた。 ーーーーーーーーーーーーーー
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