エターナルゾーン日記板
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ーーーーーーーーーーーーーー バロンズは何かを思い出したように、ぽんと手を打った。 「おお、そうだ。レインよ」 「ん?」 レインが顔を上げる。 「エリオットから話は聞いてあるぞ」 その言葉に、レインの表情がぱっと明るくなった。 「それじゃあ……!」 期待を込めた眼差し。 だが、バロンズは申し訳なさそうに首を横へ振った。 「確かに昔、屋敷に置いてあった」 「やった――」 「おぬしには悪いが 今はもうここにはない」 「えぇーっ!!」 レインの叫びが屋敷中に響いた。 思わず頭を抱え、その場にへたり込みそうになる。 「どうして!?」 「コレクションとして集めていた物の一つだったのだがな。しつこくせがまれて譲ってしまった」 「どーしよ〜……」 レインは肩を落とした。 ここまで来れば何か分かると思っていたのだ。 まさか振り出しに戻るとは。 そんなレインを見て、バロンズは少し考え込む。 「もう十年以上も前の話になるが……皇国から来た者だったと聞いておる」 「皇国……」 レインは小さく呟いた。 父ラウスから聞いたことがある。 遥か遠くにある巨大な国。 ラプトやバスカルとは比べものにならないほど、大きな場所だという。 (遠い場所だって……父さんが言ってたな) 「力になれずすまぬな」 バロンズは静かに頭を下げた。 「他に何かあれば遠慮なく言うのだぞ」 レインは顔を上げる。 何も得られなかったわけではない。 手掛かりは残った。 「ありがとう!」 その笑顔に、バロンズも微笑んだ。 ―――――――――― 「と、そういう訳なんだよね」 宿屋へ戻ったレインは、皆に事情を説明していた。 「やっぱ行くしかないよ。ジュラの洞窟」 「うう……」 サンの顔色が見る見る悪くなる。 「今から寒気がしてきたッス……」 両腕で身体を抱きしめ、ぶるりと震えた。 「準備はまかせてください!」 珍しくルーデルが勢いよく立ち上がる。 「おっ」 レインが目を丸くした。 「珍しいね。ルーがやる気だよ」 「へ、変でしたか……?」 「あ、いや……」 その時だった。 「勝手に話を進めないでもらえる?」 ぐしゃっ。 「なんで!!」 サンが床にめり込んだ。 リッカの靴が容赦なく顔面を踏みつけている。 「リッカ!」 「いい加減、私の目的を聞いてもらうわ」 ぐりぐり。 「やめてぇぇぇぇ!!」 サンの悲鳴が響く。 レインは額に汗を流した。 (わ、忘れてた……) 完全に忘れていた。 そもそも彼女の話を聞く前に勝手に旅の予定を決めていたのだ。 リッカは深く息を吐いた。 「と、その前に改めて自己紹介しておくわ」 部屋の空気が少し引き締まる。 「私はリッカ・エイラ」 真っ直ぐにレイン達を見る。 「聖地ザインを抜けた先――ソレユ村に住んでる」 「ソレユ村……」 ルーデルが首を傾げる。 「聞いたことありませんね」 「当然」 リッカは頷いた。 「地図には載ってないから」 一拍。 「隠れ里だから」 「隠れ里!?」 サンが飛び上がった。 「レ、レイン!」 「サン!」 二人は勢いよく顔を見合わせる。 「「かっこいい〜!!」」 きらきらした目。 少年そのものだった。 リッカは冷めた目を向ける。 「……バカなの?」 ルーデルだけが慌ててフォローした。 「ふ、不思議な場所に住んでるんですね!」 「まあ、そんなところよ」 リッカは肩を竦めた。 するとレインが身を乗り出す。 「いいじゃん!行こう!」 「楽しそうッス!」 「お宝はオイラの物ッス〜!」 完全に冒険気分である。 ――数秒後。 ゴッ。 ゴッ。 「いっったぁ……」 「ぼ、暴力反対ッス……」 レインとサンは揃って頭を押さえていた。 リッカは腕を組む。 「話は最後まで聞きなさい」 そして表情を消した。 「……私達一族は、平穏な暮らしを続けていた」 先程までの軽い空気が静かに消えていく。 「ある日、村の守り神――【センティメラ様】の祠がおかしくなった」 誰も口を挟まない。 「それからよ」 リッカは拳を握る。 「村のみんなが変わってしまったのは」 重苦しい沈黙が落ちた。 「変わった……ですか?」 ルーデルが慎重に尋ねる。 「ええ」 リッカは頷く。 「幸い、私ともう一人は狩りに出ていたし、長老様もその時は村を離れていて無事だった」 そして続ける。 「長老様には未来を予知する力があるの」 「未来を予知..?」 「これから起こることを、部分的に知ることができるの」 レインが息を呑む。 「その長老様が言ったのよ」 リッカは真っ直ぐレインを見る。 「銀髪の少年を連れて来い、と」 「ぼくを……?」 「この辺りで銀髪なんて、あんたくらいしか居なかったから」 実に単純な理由だった。 「だから私は力を貸した」 リッカの声が少しだけ柔らかくなる。 「あんた達の力になった」 一拍。 「私達の力になってもらうために」 サンが真顔になる。 「どうなっちゃったんスか?」 リッカは首を横に振った。 「行けば分かるわ」 それだけだった。 レインは少し考え―― すぐに顔を上げた。 「よく分かんないけど」 にっ。 「困ってる人がいるなら助けなくちゃね!」 「その通りです!」 ルーデルも力強く頷く。 リッカが口を開こうとした、その時だった。 「ちょっと待った」 聞き覚えのある声。 全員が振り返る。 「まさる!」 扉の前にはマーサルが立っていた。 「悪いな」 頭を掻きながら入ってくる。 「聞くつもりはなかったんだが、ドア越しにたまたまな」 「部外者は口を挟まないでくれない?」 リッカが睨む。 だがマーサルは気にしない。 「そう怒るな」 そしてレインを見る。 「言っちゃなんだが」 真顔になった。 「今のレインじゃ役に立てないと思うがな」 「……」 リッカは黙る。 (否定しないんだそこ……) レインだけが地味に傷ついた。 「そんなに頼りないかなぁ..」 「頼りになったら言ってねーっての」 マーサルは腕を組む。 「五日」 「?」 「五日だけ待て」 その声には妙な自信があった。 「それだけで少しは役に立てるようにしてやる」 「たった五日で?」 リッカが眉をひそめる。 「何ができるわけ?」 マーサルは鼻で笑った。 「こいつは戦い方も何も知らねえんだ」 そして真っ直ぐリッカを見る。 「じゃあ端的に言うぞ」 静かな声。 「そんな危ねぇ場所に、今のレインを連れて行かせるわけにゃいかねえってんだよ」 「!」 リッカの目が見開かれた。 レインは相変わらず分かっていない。 「?」 マーサルは笑う。 「安心しろ」 「悪いようにはしねぇ」 しばらく見つめ合った後。 リッカは小さく息を吐いた。 「……分かったわ」 渋々頷く。 「ただし五日だけよ」 「おう!」 「それ以上は待てない」 「十分だ」 マーサルは満足そうに笑った。 そしてルーデルを見る。 「ルーデルちゃん」 「はい?」 「ちょいとボーイフレンド借りるぜ」 「...ぇっ!?」 ルーデルの顔が真っ赤になった。 「まーさーる!!」 レインが抗議する。 マーサルは腹を抱えて笑った。 「冗談だって」 ーーーーーーーーーーーーーー
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