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「俺を、ここに置いてくれ!」 「…へっ?」 置いてくれ! っていうのは…、住まわせろって事? ちょっと待って、脳みそが追い付かない。 「…っと、それは…、ここに住みたいって…?」 「そう。頼む!五月が俺を許してくれるまで、それかその足が治るまで、ここに置いてくれ!」 「え…、えっ!?」 「迷惑だって、自己中だって分かってる…。でも、どうしても俺っ、お前に言いたい事が…っ!」 泣きそうな顔をして、笹原は俺の手首を握ったまま離さないで、じっと見つめている。 「…っふ、ふざけてるだろ…。」 そうとしか思えない。 俺は何度お前に、泣かされればいいの? 「ふざけてなんか!頼む!!五月!お願い!」 お願い!って子供じゃないんだから。 絶対にからかってる。 俺をからかって、笑ってやがるんだ。 「いや、無理だか」 「という事で今日からお世話になります!!」 「チース!荷物、こちらに置いておきますね!あっ、笹原さん、判子頂けますか?」 「っは!?」 笹原のその一言で、明らかに引越業者のような者達が、勝手に玄関を開けて大きな段ボール箱を二つ、家主に断りもなく置いた。 「どもッス、はい、判子。ご苦労さんっした!」 「ご利用、有難うございましたー!」 「………へ……?」 「不束者ですが、どうぞ宜しく、五月。」 両手をポケットに入れたまま俺に頭を下げた笹原は、明らかに先ほどとは態度が違う。 その余裕の表情は何だ。 「…お前…、頭ん中カビてるだろ…。」 「カビは悪いものだけじゃないぜ?」 考えようとしたけど、理由はすぐに分かった。 こいつは、引越業者さんが俺の部屋に荷物を置くために時間を稼いだんだ。 荷物が届いたとなれば、こっちのもの。 さっきの余裕の表情は、そう言っていたのだ。 なんて奴だ!! 「ふっ〜ざけんなっ!!!」 「もう遅いもーん。」 「もんじゃない!!早くこの荷物持って出ていけよ!」 笹原の態度は豹変し、まるで自宅かのように我が物顔で冷蔵庫を開けている。 「俺、家追い出されちゃったんだ。…あ、お茶飲む?」 「おれんちのお茶だろ!…じ、じゃなくて!何考えてんだよお前、早く出ていけって!」 憤慨している俺を、笹原はもろともせずに、強い力でベッドに組み敷いた。 「なっ!?」 「五月、暫くの間だけでいいんだ。…お願い。」 「意味分かってんの!?おれ、お前と関わると辛いの!思い出すんだよ!!」 やばい、また泣きそう。 だめだ、こんなの奴の思うつぼだ。 「だから今すぐ出て…っん!」 「五月、俺、お前が好きで、東京来たんだ。五月、好きだ。許してもらえるなんてもう思わねーから、俺のこと笑っていいよ。」 突然の口付けと、突然の告白。 漫画とかでよく言うけどさ、きっと今の俺、目が点だ。 「俺のこと笑っていいよ。気持ち悪いだろ?」 「ちょっ、ちょちょちょちょ待って!!」 「ん?」 「…誰が誰を好きだって?」 「俺が、五月を。尚介君は五月君が好きなんだってさ。」 「ふざけんなよ!!冗談にも程がある…っ!」 「冗談じゃないよ、五月。東京なんて知らない土地で、大学を辞めてもお前が神奈川に帰ってこないから…、働きながら探してたんだ。」 「はぁ!?で、でも何で探す必要があったんだよ!?」 「好きだから。」 今日は寺さんが用事でこれなくて、ご飯は届けてくれたのを食べるってメールしてて…、うん、大丈夫整理できてるよ、俺、大丈夫。 そんで、笹原が来て、キッパリもう来るなって言おうとしたら、引っ越し屋さんが荷物で好きだから? あれ? 俺まで脳みそカビたのかもしれない。 笹原の顔を見ても、ただ俺の顔を面白そうに見つめている。 こいつは、どこまで俺を玩具にすれば気が済むんだ? 呆れてものも言えない、って本当にあるんだね。 こいつに何から話したらいいか、全く分からなくなってしまった。 …とりあえず。 「とりあえず…、退いてくんないかな。」 >> <A href="http://72.xmbs.jp/honeyss-8381-bo.php?guid=on">本編に続く</A> <<
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