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―――――秘密だ それは甘い甘い言葉。 ゆっくりと脳に染み込んで、痺れて、身体中に広がって行く。 酔いに似た感覚。 俺は素直に頷いた。 俺と彼は住む世界が違う。 同じ教室、同じ空間に居ても薄く透明な膜で区切られているみたいに。 りんと張り詰めた空気を纏い、近寄れない。 むしろ、無言で近付くなと言っているようだ。 窓から射し込む陽射しが漆黒の髪を照らし、柔らかな風がその黒い髪をさらりと撫で、勝ち気な瞳は今、手元の本へと向けられていた。 『っ、あ…っそれ…好き…っ』 耳元で熱い吐息と共に綺麗な唇から零れ落ちる。 掠める息に反応して腕に力が入った。 腕の中には熱。 重なる肌から感じる心地好い体温と、しなやかな身体。 自分の顔より僅か上にある綺麗な顔は口元に緩く弧を描き、窓から射し込む僅かな月明かりが彼の恍惚な表情を照らしていた。 そして動きに合わせて揺れる黒髪が、夢物語の様に俺の頭を麻痺させる。 誰も居ない教室。 外からは運動部の掛け声が聞こえた。 何をするでもなく、一人教室でボケッとしていた俺に午後の陽射しは容赦無く眠気を誘って来る。 見事に俺は飲み込まれるまま意識を手放して夢の世界へ落ちた。 気付く違和感。 感じた事の無い感覚。 どの位寝てたのか教室はすっかり薄暗くなっていた。 そして俺以外の人影。 しかもその影は俺を跨がる様に座り、俺の肩口に顔を埋めて居た。 鼻に掠める相手のシャンプーの匂い。 耳の届く甘い言葉。 『俺と君の…二人の秘密だ』 頷いた俺を満足そうに微笑む彼を月明かりが照らす。 蕩ける蜜の様に甘く 囚われ、続く二人の秘かな 『秘蜜』 -end-
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