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「はぁ?別れた?」 呆れたように言った俺に、「まあ座れよ」とこいつは自分の前の席を指差した。放課後の教室に、こいつと俺以外に人影は無い。 元々お前から告白したんじゃねーのかよ。ヘラヘラと笑う幼なじみを振り返りつつ正面から見つめ返した。 「そだよ、別れた」 「あんだけのろけて来たクセに…!」 今思い出してもイライラする。なぜデートに付き添わねばならん、彼女のかわいいところランキングなんてみじんも興味ないし、彼女と一緒に奢ってもらう筋合いもない。 「思ったんだよね、理想と違うって」 「へー…」 理想と現実が一致する確率は、ほぼ0である。こいつはそんな事も知らんのか。 「なんなんだお前の理想って」 お前のドリームがどんだけ高いのか、試しに俺に聞かせてみてはいかがだろうか。 こいつが惚れただけあって、女が苦手な俺から見ても彼女は可愛いし、優しかったように思う。 うらで豹変して幻滅したの流れだったら、やだな。 「俺の理想としてはねー」 「なるべく簡潔に頼む」 長くなりそうな気配を察し、そう一言で告げる。 いい加減お腹すいたし、早く帰りたい。 てか、家が近いんだから帰りながらでも良くね…今さらだけど。 「簡潔に?」 「出来れば一言で頼むわ」 そう言うと、こいつはじっと俺をみながら静かに頷いた。 それから、一度視線を外し天井を拝み、続いて床に視線を転がした。 ほんのわずかな間だったが、異質なまでに静かで妙だった。 「……お前」 「は?」 「お前、かな」 俺の理想。 視線が外れたままだったが、静かで自然な物言いだった。 それが俺の頭を、より困惑させる。 「ちょっとたんま」 「はい、待ちますよ」 「一言じゃなくて良いから、分かりやすく言って下さい」 チラと幼馴染みの顔を見ると、視線があってしまい慌てて反らした。なんだこの状況、恥ずかしい。 「お前が俺の理想の最終形態だわ」 「悪化してる!」 俺は頭を抱えながら突っ込んだ。 「え、何が?」 「理想が俺とか訳が分からんのに、最終形態とか言われても困る!」 「俺のこと嫌い?」 「いや、好きだけど!そういう問題じゃなくてだな!」 「じゃあ付き合おうよ、決まり」 「は」 頭を抱えたまま視線が交差する。 にこやかに笑いながら頷いたこいつに感じた感情は、あきらめだった。 理想論 (面倒見いいし) (料理出来るし) (変な気使わなくていいし) (子どもとか出来ないしね) (セクハラだ)
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