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「…何個目?」 起きると、コーヒーの香りがリビングに広がっていた。 珍しく俺が出勤するよりも早く起きたらしいこいつは、マグカップを手に椅子に腰かけている。 容器に入った角砂糖を手で掴みぼちゃぼちゃとコーヒーに落とす相方の横に立ち、呆れつつ聞くと「よく分かんない」という曖昧な返事が返ってきた。 「分かんないって」 なんだよ。 「だって苦手なんだもん、コーヒー」 相方は、俺がお土産で貰った金色のティースプーンでコーヒーをカラカラ混ぜつつ困った顔で笑った。 「苦手なら飲まなきゃ良いのに」 「う」 一口飲んだが、まだ苦かったらしい。 マグカップを再びテーブルへ置き、角砂糖をまた二三個沈めた。 どうやらそれで満足する糖度へ達したらしい。おそるおそるコーヒーを口へ運んだ後、ほっとした表情でこちらを見ている。 「うまいか?」 「甘いよ」 そりゃそうだ。俺はその液体が、コーヒーより砂糖水に近い存在では無いかと疑っているほどだ。 「コーヒーはブラックが良いんだよ」 やれやれ、無理して飲まなくても良いだろうに。 俺は朝食を用意しつつ、自分が飲む分のコーヒーを準備する。 「…じゅんちゃんさ、」 「うん?」 コトリコトリ 朝食が乗った皿をテーブルへ置く。今日は二人分だ。 少し高い椅子で足をブラブラさせている相方は拗ねている……ようにも見える。理由が全く分からないけど。 向かい側の席に座る。 「じゅんちゃんさ、いつも朝一人でコーヒー飲んでるじゃん」 「お前、その時大体寝てるもんな」 まぁこいつの仕事柄、しょうがないんだけど。 「そういう話じゃなくて!」 「はいはい」 「むー」 この歳で頬を膨らませてすねるとかどうなの? それが可愛いとか思っちゃう俺なんなの? 焼いたトーストをかじりながら、そろそろコーヒーがちょうどいい頃かと立ち上がった。 キッチンへ向かう俺を追いかけてくる足音がある。 「ん」 なんだなんだ。 コーヒーが入った容器を手に振りかえる。 相方は手にマグカップを持っていた。 「誰かと一緒に飲んだ方がおいしいでしょ?」 ふわり。 コーヒーと共に、笑顔が香った。 同じコーヒーっていうのは俺の理想だけどと笑うこいつを見ていたら、好きで好きでやっぱり好きで、どうしようもなく幸せで堪らなくなった。 「牛乳」 「え?」 「牛乳飲めるよな」 うんという返事を待たず、冷蔵庫を開けて牛乳のパックを手に取った。 俺のコーヒーと牛乳と、こいつのコーヒー。 「うわ、甘っ」 「ちょっと…苦い」 でも、おいしいね。 その言葉に頷きはしなかったが、次の日から一緒にカフェオレを飲むのがうちの習慣になった。 『生活習慣』
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