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「バカにすんなよ!」 気付いたら叫んでいた。 誰もいない家で。 あー…だめだ、これはいかん。 この精神状態はヤバい。 死んじゃう、下手したら死んじゃう。 誰も居ない家で1人、俺はボッタボタ泣いていた。 世知辛い、さすが世の中世知辛いわ。 その辺にあったバスタオルで顔をガシガシ拭いて、ティッシュで二回鼻をかんだら幾分かすっきりした。 なんか今日は情緒不安定だ。 自分で分かる位には。 いれていた予定も全部キャンセルした。 こんな日に行動してもロクな事ないしね。 ぽちっとな。 ブーンと比較的大きい音をたてながら、パソコンが起動する。 タダで貰った中古だし、といつも我慢する。 自分のノートパソコン欲しいなぁ。 そんな余裕が無いことは俺が一番よく知っている。 たまにバイトをしつつ、奨学金でボソボソと暮らす貧乏学生の俺にはタダのリサイクルパソコンがお似合いというやつである。 弟が設定した流行りの48人組のアイドルの背景が表示されたのを確認して、インターネットのアイコンをカチカチと押した。 メーラーを起動すると新着メールが三件来ていた。 どーせ宣伝だろ。 そう思いながら一覧に目を通すと、案の定一件はSNSでもう一件はゲームショップからだった。 あと一件は、と。 「あずさから?」 あずさ、とはネットで知り合った友だち……いわゆるオン友である。 なんだろう。 一度クリックしてメールを開く。 件名:ちわす あずさらしい簡潔なタイトルに笑う。 本文: ちわす。 こーちゃん元気? 俺、最近よく分かんないんだけど辛い。 なんつーか、世知辛い? みたいな。 慰めてー。 バッと受信時刻をみる。 メールが届いたのは、わずか五分前である。 なんなの? 俺とこいつ繋がってるの? なんというシンクロ率。 双子みたいだな! 俺は、あずさにその気持ち分かるぞと長いメールを書いて返信した。 ふぅなんだろう、ちょっと元気でた。 メールの一通でぶっとんでく憂うつに悩まされていたなんて、我ながら馬鹿馬鹿しい。 コーヒーでも飲むかと、一旦立ち上がる。 ミルクのおかげでまろやかなそれは、よく頭に沁みる。 そういえば。 はた、と気付いた。 前に憂うつな時も、同じようなメールがあずから届いたような気がする。 あずさとの付き合いはそれなりに長い。 年賀状も交換したし、1人もの同士とクリスマスのプレゼントを送りあったこともある。 ここ1年位だろうか、何かに失敗して凹んだり落ち込んだりした時はそれを見透かしたようなタイミングでメールが来る。 勘だよ、勘。 と以前あずさは言っていた。 俺が凹んだ時になぜかお前も凹んでるだけだ、とも言っていた。 その時は「まじかよww」なんて返したが、おかしくね?さすがにすごすぎね? まるで、──監視されてるみたいだ。 ゾワッ。 自分の考えに、一瞬背筋に変な力が入る。 馬鹿、んな訳ないだろ。 年賀状を送る時に住所をみたが、あっちは北海道で俺は宮城だ。 地図上では近いかも知れないが、気軽に行くわーなんてこれる距離じゃない。 考えすぎ考えすぎ。 やっぱり頭の調子良くないな。 俺はコーヒーを飲みほすと、カフェインが働かないうちにとパソコンをつけたまま再び布団に潜りこんだのであった。 「あ、こーちゃん寝るのかな」 布団を身体にまきつけるようにして寝るのは、こーちゃんの癖だ。 コロコロしたその姿に、思わず可愛いと小さく呟いていた。 朝から泣いてたから心配したんだけど、もう大丈夫なようだ。 泣き顔も可愛いんだけど、やっぱり笑顔だよね笑顔。 手元のパソコンに届いた長文のメールにフフと笑う。 可愛いなぁこーちゃん。 こーちゃんが必死に打ってると思ったら、このメールだけで抜けるわ。 それくらいいとおしい。 こーちゃんこーちゃん。 台所にたった時一瞬怯えたような表情になったのが気になるが、朝から泣き顔がみれたのは大きい収穫だった。 画面ごしじゃ足りない。 ふふ、と笑ったあずさの背後にはいくつもの段ボールが積まれている。 もうすぐ、もうすぐだ。 「ずっと一緒に居れるようになるからね」 こーちゃん、と呟いたあずさの顔に浮かんだのは屈託のない笑顔だった。 おわり。
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