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はっきり言って俺は平凡だ。が、強いて特筆するとすれば、デンジャラスな兄貴がいて、そのデンジャラスな兄貴と喧嘩をよくしていたから頑丈でなおかつ反射神経がよくなったと言うことくらいだろうか。 ちなみにそのデンジャラスな兄貴と仲は悪くない。 目の前に拳が迫っている状態でなぜこんな呑気なことを思っているかと言うと、遅いからだ、その拳が。 俺の通う高校は、所謂いかにも王道な全寮制のお金持ちのお坊っちゃんが集まった学校である。まあ、現在進行形で荒れに荒れてはいるが。 俺は一般家庭の庶民だ。父親は中小企業の営業マン。母親は多趣味を生かしたカルチャー教室を家でしている、どこをとっても普通の家庭出身である。ただ、両親とも人当たりがよく超社交性に富んでいて人脈が異様に広い。お陰で高校はお誘いを受け意味不明な名目の奨学生として通っている。ちなみに、入れ違いで卒業した兄貴もそうだった。 価値観の全く違う学校でも慣れれば快適で、それなりに楽しく過ごしていた時に現れたのがかなり風変わりな転入生。アフロを伸ばしたらそうなるのか? とついつい考えてしまった異様な髪型と、顔の半分はあるんじゃないの? て眼鏡はわざわざ油で拭いたのかってくらいぎとぎとで、容姿云々より身嗜みとしてどうよ? って思う姿で、それがまたあり得ないくらい自己中心的。だけど、その訳のわからない理論で人気が高い生徒会や、爽やかスポーツマン、一匹狼と名高かった不良を陥落し、今や転入生の取り合いで彼らの親衛隊は制裁だと大騒ぎ。 そして、隣の席になった俺が現時点での一番の被害者。立ち位置は転入生の引き立て役かつ身代わりの平凡ってとこか。 両親に似て社交性豊かだったお陰で、心配してくれる親衛隊はいても、俺に制裁しようってやつはいなかった。それが気にくわないのか、転入生は癇癪をおこして冒頭に戻る、だ。 俺って頑丈だし、敢えて殴られて本格的に被害者ヅラするのも面白いか? なんて不謹慎なことを考えていたら、目の前に手が現れてパシッと小気味良い音がした。 「おい、ボケッとすんな」 いやいやいや、どうなってるの? その手は一匹狼の不良のもので。 「なんで邪魔するんだよ! 鑑は俺の味方だろっ! 俺のこと好きだからって気を引くような真似すんなよ、みっともないっ」 うわぁ、出たよ相変わらず。聞いてるこっちが恥ずかしくなる言い分。 「いや、俺が好きなんはこいつ」 「っっ! 何言ってるんだよ、鑑。 嘘はよくないんだぞっ!」 「ん? はい? 今なんて?」 意外な展開に俺の頭はついていかない。というか、一匹狼不良の鑑、先輩? 多分下の名前、転入生騒動で知り合ったし。 意味不ってこういうとき使うんだなぁと現実逃避中、 「俺はこいつに去年一目惚れしてからずっとこいつが好きだ」 「なんでこんな奴好きとか嘘言うんだよっっ!」 「……あっ」 ポンと手を打って思い出す。 「デンジャラス兄貴の後輩くんだ」 一人納得して微妙な空気を去ろうとしながら、 「俺も嫌いじゃないけど、転入生に付きまとわれてるうちはムリ」 と、しっかり返事だけは返しておく。 「そうそう、転入生くん、こんなやつの俺は君の友達でもなんでもないよね? 今度殴りかかりにきたら傷害罪で訴えられちゃうよ」 「何言ってるんですか、貴方は。 私の家にかかればすぐに揉み消せます」 王子様、なんて慕われてるけど実は腹黒な副会長。 「いや、まあ、やってみればいいよ。 どうせ訴えるのは俺じゃないし」 周りが唖然としている間に、俺は清々したとばかりに転入生の側を離れた。 「おいっ」 焦ったように着いてくる一匹狼不良、基、鑑先輩が追い付くのを内心心待ちにしている俺がいるのは内緒のこと。
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