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「おはよう、手塚。今日も早いね」 殊更にこやかに、不二は言った。言外に(部長が朝一番に来るのも考え物だよ)と後輩達の為に付け足してみたものの、当の手塚は気付く気配すらない。 まあ、いいや。 それが手塚だと、不二は無愛想に挨拶を返してくるチームメイトの隣に立った。 新学年に進むので恒例のロッカー換えが先日行われたのだが、不二のロッカーは何故か手塚の隣になった。 嫌な訳ではない。 自分によく抱き付いてくる英二の賑やかさが、物静かな手塚の機嫌を逆撫でさえしなければ、どうという事はないのだ。 実際、鬼部長の逆鱗に触れた所で罰を与えられるのは英二だけなので、やはり不二に影響はない。 手塚の隣は居心地が良くも悪くもなかった。 ……違うな。 と、不二は己の感想を否定した。 手塚の隣は居心地が良くも悪くもあるのだ。 まったく逆の発想の様で、結局、同じ答えになっている。しかし、不二には後者の方がしっくりくる。 シャツを脱ぎつつ、不二は、ふ、と思い出した。 「今日って四月一日だよね?」 念の為、横目で問う。 「そうだな」 手塚の答えは簡潔だ。いっそ清々しい程に、一言で済まされる。 誤解を招きやすい手塚の返答を、不二は割合早い段階で飲み込んだ。 彼はこういう物言いの人間なのだ。 未だに英二は慣れないらしいが。 「じゃあ、エイプリルフールだ」 「そうなるな」 不二の微笑みに、手塚は小さく溜め息を吐いた。 お前もくだらない嘘をつくのかと言わんばかりの態度だ。 手塚の言外に滲み出された呟きを、不二は正確に捕らえる事が出来る。 造作もない事だ。 だって僕は手塚じゃないからね。 不二は青学レギュラーのテニスウェアを手に取り、眼鏡の仏頂面を見上げた。 不二の視線には気付いたらしい、手塚が(なんだ)と無言で見詰め返してくる。 だから、不二はにこりと笑った。 「愛してるよ、手塚」 途端、仏頂面の眉間に皺が刻まれる。 不二はそれを放って、さっさと着替えを終わらせた。 ちゃんとラケットを忘れずに、部室を後にする。 一人残された手塚が今どういう表情をしているのか。 不二は想像してみる。 意識して、都合のいい方の夢をみる。 エイプリルフールくらい、正直でいたいもんね。 四月一日。 早朝のテニスコート。 不二は己の天の邪鬼な性格に、苦笑した。 end.
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