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ほんの少し頬に触れた指先が、熱くって全身が沸騰しそうだ。 -指先からの熱伝導- 夏休みも終わり、石矢魔高校にも生徒たちの活気が漲っていた。 「おい、聞いたか?夏休み中に男鹿が、東条さんとやり合ったらしいぜ。」 「マジでかよ!?で、東条さんが勝ったんだろ。」 「それが…。」 そんな会話が校舎を支配している中、 「体がギシギシいいやがる…。クソ東条の野郎、ぶっ殺す!!」 石矢魔高校の噂人 男鹿辰巳が、屋上にて雄叫びをあげた。一瞬のうちに、騒がしかった校舎は静寂に包まれた。 「みゃ?」 自分より高い声に、隣を見るとベル坊がほ乳瓶から口を離しじぃーと見つめていた。 「…なんでもねぇよ。気にすんな。」 男鹿はベル坊の頭を優しく撫でる。だがベル坊は、何かを感じ取っていた。 「ダッ。」 まだ半分以上も残っているほ乳瓶をそのままに、ベル坊は抱っこを強請ってきた。 「ベル坊?まだ、こんなに残ってんぞ。」 「ダッ!!」 男鹿が問いかけても、ベル坊が断固として抱っこを要求するので、男鹿は要求をのむことにした。 「これで、文句ねぇだろうな。」 「ダッ。」 男鹿に抱っこしてもらいベル坊は、嬉しそうに返事をする。 そこから服を掴みよじ登ってきた。 「ベル坊?」 「みゅう。」 小さい手で男鹿の首に巻き付くと、頬ずりをする。 まるで、元気を出せと言うように…。 「・・・・ベル坊、俺は落ち込んだりしてねぇけど」 男鹿はベル坊を抱きしめて、 「ありがとうな・・。」 「ダッ!!」 ベル坊の嬉しそうな顔に、おもわず表情が和らぐ。誰一人としてみたことのない、穏やかな笑みがそこにあった。 ミルクを飲み終わったベル坊は、男鹿のおなかの上で昼寝を堪能していた。 男鹿は、やることがないので屋上の階段口の壁に背を預けて空を眺めていた。 「こんなとこに、いたのかよ。男鹿ちゃん」 声がしたほうを見ると、不良が4・5人ニヤニヤしながらこっちをみていた。 「東条さんとやり合ったみたいだが、今のお前なら赤子を捻るのと同然だな。」 「・・・・。」 確かに、東条はゼブルスペルによる力の増幅もあり、お陰でかなりの苦戦を強いられたのだ。 制服で隠れているが、肋骨を2・3本いってるため白い包帯が体には巻かれているし全身傷だらけの打撲状態だった。 屋上にいるのも、馬鹿の相手をしないため。 だが、その馬鹿共に見つかってしまったのだ。 (馬鹿と煙は、なんちゃらか…。) 男鹿はベル坊を自身から剥がそうと手を伸ばした時。 「悪りぃが、先約だ。お前ら、邪魔だ。どけ。」 突然の乱入者に、一同の視線は一点に注がれる。 「あぁ!!誰に口きい・・。」 不良たちの背後に現れたのは、東邦神姫 東条英虎。 数日前に男鹿とやり合ったばかりの顔や腕には、バンソウコや包帯が自己主張をしていた。 青ざめている不良たちに、 「聞こえなかったか?それとも邪魔するんなら、俺が相手してやるぜ?」 その笑みは、狩りを楽しむ肉食獣の様に凶悪なものだった。 「ひぃ!!すいませんでした!!! 先程まで、不適な笑みを浮かべていた不良たちは一変し青白い顔で走り去っていった。 「…。」 男鹿はベル坊に伸ばしていた腕を下ろし、昼寝を決め込もうとした。 「おい、命の恩人に礼の一つもないのかよ。」 「頼んじゃいねぇよ。あんたが勝手にやっただけだろ。」 「確かにな。」 くっくと笑う東条と男鹿の間を流れる空気は、とても穏やかものだった。 東条は、何かに気づき男鹿の真正面に来るとしゃがみ込んだ。 伸ばされた手が、頬に触れた瞬間ビックと男鹿の肩が小さく跳ねた。 「これ今朝の喧嘩のやつだな?殺してやるから、あいつらの名前教えろよ。」 男鹿の顔には、ナイフで付いた切り傷が赤い線となって存在していた。 東邦神姫の東条を倒した噂を聞き、我先にと男鹿に喧嘩をふっかけてくる輩が多くなったのだ。 「ヤダね。俺の喧嘩に、あんたが首突っ込むもんじゃねぇよ。」 鋭い眼光が行き来する中、東条はため息を吐き出した。 「分かってねぇな。」 「あぁ!?」 男鹿の頬にあった手を、顎に移動させる。 「お前を、傷物にしていいのは俺だけだ。他の奴の傷なんて、つけてんじゃねぇよ」 「はぁ!?何、言っ・・!!?ふぅ・・」 いきなり東条から与えられた濃厚なキスから、男鹿は逃れようともがくが。 お腹の上には昼寝中のベル坊、両手は知らないうちに東条に押さえられていて身動きができない。青空の下に似合わない、卑猥な水音と漏れる喘ぎ声が響く。 キスを堪能した東条が唇を離すときには、目にうっすら涙をため蒸気した肌を曝す男鹿が出来上がっていた。 「可愛いな。ますます気に入ったぜ、男鹿」 東条が頬を撫でるが、男鹿はその手を払った。 「うっせぇ。」 東条は別に気分を害した様子はなく、男鹿の耳元に囁いた。 「これからは、これより気持ちいいことしてやる。楽しみにしておけよ」 「!?・・・この変態が」 東条は笑いながら立ち上がると、その場を後にする。 だが、何かを思い出し足を止め振り。 「1日遅れだが、Happy BirthDay tatsumi」 「!?なんで、あんたが俺の誕生日、知ってんだよ。」 「愛の力?」 「馬鹿!!」 「それは、秘密だ。じゃあな、明日もそこにいろよ。」 また背を向けた東条に、 「東条!!」 「なんだよ?」 振り返った先には、顔を真っ赤にした男鹿が小さい声で。 「ありがとうな。」 東条は背を向けると、返事の代わりに手を振って答えた。 静寂が戻った屋上に、男鹿は東条が触れた場所に指を這わせた。 おさまることを知らない熱だけが、体に残りくすぶり続けていた。 「くそっ、余計なもんばっかり置いて行くんじゃねぇよ。どうしたらいいか、分からないじゃないか。」 蝉の大合唱が鳴り響く中、新学期はまだ開けたばかりだった。 -end-
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