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あの日からも、千種と犬の態度は変わらない。 そんなことには頓着しないのかもしれないし、最初から、私に期待してなかったのかもしれない。 でも、ここに居られるのなら、なんだっていい、と思う。 骸様−− 骸様は、最近はいつも沈黙している。水の流れに身を任せる浮草のように、穏やかに。ホントは、持つべき力を封じる忌むべき液体のなかで、自由なんて、かけらもないのに。 私は、骸様の希望でありたい。たとえ、どんなに身の程知らずで、おこがましいしいことであっても。 私にとっての骸様がそうであるように。 「オマエ、いつまで立ちながら寝てるびょん」 ライオンかとみまごうような金髪の立て髪が視界を塞いだ。 「……遅い」 前方を歩く千種も振り返って言う。 足元には、白線とコンクリートの、セブラ柄。横断歩道。 どうやら、信号を待つ間に考え事にはまり込んでしまったようだ。ふと目を上に転じれば、青緑の光りが瞬いていた。 億劫そうに千種が戻って来て、髑髏は、すっかり渡りそびれたことに気付く。 すまない気持ちいっぱいにごめん、と言うと、 犬は、いまさら、いうな、ばーか、と吐き捨て、 千種は、無言で眼鏡をずり上げた。 骸様からも、一応のボスである沢田綱吉からもとくに命令のない時は、暇だった。 だからと言って、往路をふらふらしていては、補導されかねない。骸様の命で制服を着せられているから、なおさら対象になりやすい。警察に目を付けられたら今後に響くので、三人は、おとなしく学校に通う事にしていた。 きーんこーんかーんこーん… 終業のベルが鳴って、わらわらと、蜘蛛の子を蹴散らすように、後者から黒い頭や、茶色い頭の生徒が溢れ出す。制定の帽子なんか、ダサくてかぶってられるか、というのが大多数意見らしく、深緑のとげとげの姿はちらほら、としか見受けられない。ここに骸様がいたら、嘆かわしい、と嘆息するだろう。 窓から教室のほうに向き直ると、犬が嬉しそうに放課後の計画を話していた。 化学、と下手くそな字で書かれたノートを開ける。髑髏も千種も、それはなんでもノートというよりか、遊びの計画ノートと認識したほうが正しい事を、充分過ぎる程、知っている。 喜々として話す犬と、髪の動きだけで相槌を打つ千種。骸様と出会う前までは、地平線の彼方よりも遠い所にあった光景。いまは、こんなに近くに在って 、でも、それは、幻のようで。 いつ、 それを自分壊してしまうかと、 不安で。 でも、構わない。 今が、 あれば。 ざあぁぁぁ… ゲームセンターを出ると、機械の喧騒の代わりに、アナログな音が三人を取り囲んだ。 「うへっ、雨かよ」 犬が唾と共に吐き出した。 「……犬が、いつまでも、止めないからだ」 千種がぼやく。 傘は、髑髏も持っていなかったから、 「……」 無言のまま、犬を見つめる。 「なんらよ」 ふて腐れたように口をとがらす。 「……往生際悪い」 「どうしろって、いうびょん」 犬と千種が、時間を潰すでもなく、中身のない会話をする。 髑髏は、どうにかして、屋根伝いに帰れないか、と辺りを見回した。 と、背の高いビルとビルの間、灰と灰の合間。夜を隈なく照らすかのようにみえたネオンサインにすら見捨てられた暗闇。 そこに、ぶるぶると震える何かがいた。 「あ、どこ行くびょん!!!」 後ろで、犬の声が破裂する。 でもそれは、すぐに人込みにまぎれた。 あれは、なに? ぶるぶると震え、 孤独と、 寂しさと、 恐れに、 踏み潰されそうになっているのは !!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 「犬、タオル、温めて持って来て」 場所は、いつもの廃ビル。青白い月明かりだけが光源。人口の石が、冷たく光りを跳ね返している。 その中央に座り込むのは、一つの人影。Chrom髑髏。 彼女のわきに立つ影が、月明かりの外へ走り出して行く。何かをぶつぶつと呟きながら。 入れ代わりに、別の影が入って来て。ことん、と何かを置いた。 「ありがとう」 髑髏のいつになく真剣な声に、千種は肩を竦め、ガーゼを手渡した。 髑髏はそれに、彼が持って来た桶の中のミルクをすわす。一肌に温めてあるから、ぬるり、とした感触が指先に伝わる。 吸わせ過ぎたミルクを適度にきって、彼女は膝の上に目を落とした。 「あ、どこ行くびょん!!!」 犬の声が背後で破裂して、すぐに砕け散った。 道行く人が、近付いて離れて。風景が、走馬灯のように流れて。 猫だ! 捨てられた、 猫だ! 人込みを掻き分けるには、痛々しい程に、小さく細い肩が悲鳴を上げる。 舌を、庇いきれずに切って、食いしばった歯の間から、一筋、赤く流れる。 雑踏の声は、ノイズのように霞んで消えた。 −−あんたなんか、死んじゃえば〜! その声は、けたたましい笑いのフルコース。 前菜も、スープも、メインディッシュも、それから、デザートまで、嘲笑ずくし。あぁ、鼓膜が、破れてしまう。 −−触んなよ、汚物が その声は、好きだった人に触れた瞬間に。 ただ、突き飛ばされて、よろめいて、少し、ほんの少し、当たっただけで。どきどきと膨らんだ胸は、一瞬にして、すり潰された。 −−おまえなんか、生まれなければよかったのに!!! もう、それは、思い出すだけで全身を貫く、巨大な楔。 母の、声。 …にゃ……あ 子猫の声が耳に届いて、 起き上がろうともがく姿が、瞳に写って、 安堵で、 ちょっとずつ、ちょっとずつ、 心が膨らむ。 ありがとう、神様、と子猫を抱きあげれば、その子は雨にしとどに濡れそぼり、とても、泣きたいくらいに冷たくて。 「どうしたびょん?」 「……連れて帰ろう」 追い掛けて来てくれた彼らの声が、一度しっかり閉めたはずの涙の栓を、優しく、取り払ってくれた。 あいつの涙なんて、初めて見たびょん。 いつもトロくさくって、何をやらせても弱っちくて、不満足で。 イライラするから罵倒すると、瞳を水玉のように震わせてから、ごめん、と謝る。 嫌い、 キライ、 ムカつく、 オマケにウザったい。 でも、何があっても泣かないその姿には、正直、感心してた。ヤッパリ、少しはイラついていたんらけれど。 何で、泣くんら? 俺にはわからない。 たかが、子猫一匹のコトに。 肺と肺、その少し上が、ザワツク。のたうち回ってトッパライたい程に。 何で、泣くんら? 俺が何を言っても動じないクセニ。 あああ、ハラのたつ。 薄い毛布をヒキサイて、ヒキサイて、アトカタもなく、消し去りたい程に。 子猫は、一晩髑髏が看病しただけで、ピンピンに、回復しやがった。 その生命力に、ホッとした。 後述筆記→ 嗚呼ぁ、なんか、犬髑みたくなってしまいましたよ? (本当は、髑雲の予定だったのに。話が進めば進む程一話がながくなっていく罠。作者の気分としては、前後編の前編になる感じ。) 長い目でみれば、夏霞がプロローグ、捨てられて、が起承転結の起みたいな感じです。 捨てられて、後編Ver.には、ちゃんと雲雀さん出します。(本当ですっっ!! ですので、少しでも興味を持たれたかたは、サイトへおこしください。ちまちま更新中です。
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