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一目見た瞬間から ヤバいと思ってた ダメだと思ってた だから、きらいだ 大事なものは失くしたと 目の前のたった一つを守りたいと そう言うお前が眩しくて 眩しくて だから、腹立たしい 眩しいなんて そんなことを思うこと自体 認められない 認められるか ムシャクシャして イライラして だから、突き放し だから、悪態をつき だから、きらうんだ 嫌われればいい そう思った なのにどうして 俺は今、こいつと一緒にいる? こいつといたら 俺は‥‥ † † † † † 「じゃあそう言うことで、また“二人で”任務行ってきてね〜」 “二人で”を強調しながら飄々とした声で任務を言い渡したのは、黒の教団室長──コムイ・リー。 その説明を受けていたのは銀の髪が目立つ少年──アレン・ウォーカーと、長く黒い髪が目を引く少年──神田ユウだ。一人掛けのソファへそれぞれ腰かけていた二人は顔を引き攣らせている。そして同時にちらりと目の端で相手を捕らえてから、いかにも嫌そうな顔をして自分の上司を再度見上げた。 「嫌だ、なんて言わないでよ〜? みんな出払ってて、残ってるの君たちだけなんだから」 二人のわかりやすい反応に、コムイは少し困ったような顔をして笑った。 「‥‥‥わかりましたよ」 そんな上司の表情を不服そうに窺っていたアレンだが、溜息をつくだけに留めて立ち上がる。渋々といったように資料を受け取ると、早くも部屋を出ていった。 しかし神田は、その後も変わらず眼鏡面を睨み続けていた。 「ほら〜、神田くんも出発の準備しないと」 戯けた調子を崩さないその言葉に、青筋が額へ一気に浮いた。勢いをつけて立ち上がり、ツカツカと執務机まで歩み寄ると怒りのままに机を手の平で打つ。盛大な音を立てたそれは、乱雑に置かれた資料の山を雪崩のように崩れさせた。 だが机の主は我関せずとばかりに、悠々と腰掛けたままコーヒーを啜るばかりだ。 「どういうつもりだ」 「ん〜? なんのことかな?」 どすを効かせた声にもやはり表情を変えず、ちらりと目線を上げてくるだけだった。怯まない様子に、机を挟んだまま前のめりになると眼鏡の向こうにある目を覗き込むようにして更に睨みつける。 「言ったよな。あいつとだけはもう組ませるなって」 「ああ。でもね、さっきも言ったけど、み〜んな出払っちゃってるから仕方ないんだよ〜」 へらへらへらへらとあくまでもふざけた態度で答える上司に、額の青筋は増えていく一方だ。 しかし、どれだけ脅しをかけても堪えないなら怒鳴るだけ無駄だ、と声を落とした。それでも引き攣る顔は隠さずに続ける。 「あのときはまだ、任務に就いてない奴が何人かいたはずだがな」 「‥‥‥」 しばらくは窺うようにこちらを見ていたコムイだが、溜息をつき肩を竦める。また少し困ったような顔をした。しょうがないなと、子供を窘めるような、そんな顔を。 「ただの興味本位だよ。君は誰に対しても態度が悪いけど、あそこまで突っぱねたのは彼が初めてだ。だからちょっと気になって、ね」 その表情とは裏腹に出てきた興味本位という言葉に、神田は眉を顰めた。 人をなんだと思ってやがるんだ。 そんな理由なら組む奴を変えろと噛みつこうとするが、先に釘を刺されてしまう。 「ほかのエクソシストはみんな、もう出発してるんだ。諦めて早く準備に向かった方がいいよ?」 クスリと笑って資料を差し出す、この煮ても焼いても食えない男を、しばらく睨み続けた。だが、これ見よがしに舌打ちを一つ投げつけて目の前の資料を引ったくる。そのまま踵を返して靴音も荒く外へ向かった。 「あんまりいじめちゃダメだよ〜」 扉を潜った所でそんな事を言われて、思わず肩越しに振り返る。しかし相変わらずの表情にすぐに顔の向きを直した。精一杯嫌みを込め、派手な音を立てて扉を閉める。 応えるのも馬鹿らしい。 後ろではまた、何かが崩れる音がした。 † † † † † アレンと神田は準備を終えると、早々に地下水路のゴンドラに乗った。流れに任せて外へ出ると、つい先日の任務宜しく汽車に乗り込む。その間もずっと無言を通す二人に、案内役の探索部隊員はただただ胃を痛くする他なかった。 やっと一息つける。と思いきや二人に用意された席は然程広いとは言えない四人掛けの部屋。個室はここ以外全て埋まっているらしい。仕方なしに二人は、向かい合うようにして設置されている二人掛けの席にそれぞれ別れて座った。これも、この間の任務の時と似ている。けれどあの時よりも空気は重い。 探索部隊員はその空気に耐えられなかったのか、そそくさと部屋を出て扉の傍に立ちっぱなしで待機する事を選んでいた。 胃が保たない。後日探索部隊員がそうぼやく事など想像もしない二人は、ひたすらに沈黙を続ける。 構わなければいい。 そう言い聞かせて、窓の縁に頬杖をつき流れる景色を眺めていた。しかし、汽車に乗るために駆けた身体が落ち着いてくると、諸々の苛立ちが脳裡に舞い戻る。 この状況も、この状況を作ったあの上司も、向かいに座るこいつも、己自身も、全てが気に食わなかった。 「‥‥チッ」 ぼそりと零してしまったそれは、針で穴を開けるように小さく、けれど確実に、静けさを破る。 「なんで俺がモヤシなんかと」 「アレンです。──って、なんかとはなんですか」 忌々しげな口調が気に障ったのか、アレンは視線も鋭く声を尖らせた。半ば喧嘩腰の言葉に、席に着いてからずっと窓の外に向けていた視線を動かしてしまう。糸で引かれるみたいに前を向いた。 自分の正面に座って、真っ直ぐこちらを見ている姿が目に入る。胡乱な目から延びる視線と視線が交わる。 その事に、酷く動揺した。 「‥‥、なんでそこに座ってんだ」 アレンはぽかんと見上げてきた。今更な事を言われたらそうなるか。 だがすぐに顔を引き締め、訝しげな目で見つめなおしてきた。 「なんですか、急に」 正面に座っている。真っ直ぐに見つめられている。それだけで、この鼓動が酷く耳に付く事実。その事に驚き、内心顔を顰めた。 どうして、目を向けてしまったのか。見なければいいものを。また舌を打ってすぐに視線を窓の外に戻した。 午後の穏やかな街並みは駆け足に去っていく。限りなく続く風景を楽しむ余裕はなかった。 だから、嫌だったんだ。 「お前、横にずれろ」 「、どうしてですか」 「お前には関係ない。とにかく俺の正面に座るな」 淡々と告げた。何もないように取り繕って、関心の欠片もないように装って。冷ややかに、目もやらずに、告げた。 その甲斐あってか、一旦は口を開くもアレンはすぐにそれを噤ませる。そして溜息を零して、温和しく身体を横にずらす姿も視界の端に見て取れた。 けれど満足感は得られなかった。 一度強く目を瞑る。傍らに置いていた資料を手に取ると、誤魔化すように目を注いだ。 汽笛が鳴る。ガタンと揺れる。反して降りた沈黙。 二人は黙したまま、ただただ目的地へ向かう。列車の走る音だけが、やたら賑やかだった。 † † † † † 目的地は教団から200キロ北東に進んだ山間部にある、さる渓谷。 その渓谷に、人の侵入を拒むような強い風が絶えず吹き始めたのは一月程前からだ。 その風は全て、渓谷の最奥にある掌程の大きさの穴から吹き出しているらしい。止む事のないその風は、まるで見えない壁でもあるかのように、一定の場所から先は一切吹かないのだという。 その風がイノセンスによるものであると踏んだ探索部隊は、その穴の内部を調べようとした。だが、透明な蓋でもあるかのように何かに弾かれ調べる事ができず、調査は難航。結局打ち止めになった。 そのため仕方なく、詳細な下調べもなしにエクソシストの派遣を要請した。上層部は探索部隊員が近付いても何も起こらなかった事から、危険はさほどないと判断したらしい。要請を早々に受理し、派遣したのが自分と神田という訳だ。 目的の駅に着くと、前回の任務でも担当者だったトマが二人を出迎えた。今回は渓谷までの道案内をしてくれる。 再会の挨拶を簡単に済ませると、トマに連れられ二人は早速駅を出た。そのまま町を離れて山を登る。例の渓谷には六時間程で辿り着いた。登り始めは木々も見られる普通の山だったが、山頂に近付くにつれ緑は減り、今では辺りは岩と土ばかりだ。 「すごいですね」 風の壁を見上げながらアレンは思わず呟いていた。 砂嵐と言って良い程に砂の混じった風が吹き荒れている。しかしその風は報告書通り、見えない硝子の壁でもあるかのように数メートル先で綺麗に途切れていた。 「ここから崖沿いに二キロ進んだ渓谷の最奥、高さ二メートル程の位置に例の穴はございます」 「そこにイノセンスが?」 「確かな事は申せませんが、‥‥可能性はございます」 話している自分の横を通り過ぎて、神田は風の壁直前で立ち止まる。剣を扱う者独特の、すっと伸びた背筋が目に付いた。 肩越しにこちらを振り返った神田は顎をしゃくってくる。 「さっさと行くぞ」 「‥‥行くってこのなかを、ですよね?」 「当たり前だ」 風だけならいい。だがこの、砂を巻き上げる強風の中へ入るのは、正直少し躊躇われた。砂が体に打ち付けられるのは必至。間違って目にでも入れば大怪我にもなりかねない。 色々と想像してしまって顔を引き攣らせていると、鼻で笑われた。神田は一人歩みを進める。 「怖気づいたんならそこで待ってろ」 「なっ、行きますよ! 行くに決まってるでしょう!」 確かに躊躇いはしたが、恐れた訳じゃない。まして怖じ気付いたなんて事は決してない。 勢い込んで今にも砂を含んだ風の中へ入ろうとする所へ、慌ててトマが声を上げた。 「お待ち下さいお二方!」 背負っていた荷物を下ろし、中を漁りながら駆け寄ってくる。取り出したのは、目元全体を覆えるようなゴーグルと、顔の下半分が隠れるようなマスクだ。それぞれに一つずつ手渡される。 「こちらをお使い下さい。そのままでは危険ですから」 「ありがとうございます」 少しほっとしながら、受け取ったそれを着ける。トマに一度会釈をしてから、既に風の中に見えなくなってしまった神田の背中を追いかけた。 「ウォーカー殿、神田殿! お気を付けて!」 トマはもうほとんど見えなくなった黒衣の背に、せめてとばかりに声を投げる。 風の壁の前で佇みながら、背負い直した荷物の肩紐を握り締めていた。 CONTINUE 収まりきらないのでここまでです。 続きはサイトにてどうぞm(__)m
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