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応募が開始され続々と届く作品と日々対峙しつつ、本格的に選考にとりかかる前に、自分のなかで長い自問の時間があった。「21世紀の新鋭詩文学とはなにか」。連続した時のなか、大河のひとしずくである私たちの、ひとしずくたる意味。想い、湧き、目を凝らし、そうして編まれた言葉はどこへ向かうのか。書きたいものを書くのか、書かなければならないものを書くのか、書かれなければならないものを、書くのか。どこで誰に読まれることを望んでいるのか、詩の海なのか、人の、海なのか。そのベクトルの傍らで中継点を設け選考をする私たちもまた、選ぶという行為の元、作品に、大河に、試されているのかもしれない。ひとときも気の抜けることない数ヶ月間だった。 * * * まずは膨大な作品群から、一次審査通過作品として次の8篇を推挙した。 「六月を雨に少女の祈る」 森下ひよ子 「水葬」 谷竜一 「ヘルタースケルター」 he 「水を捨てる」 宮下倉庫 「白昼夢」 しもつき、七 「before dark , before daylight」 いとうかなめ 「無題(2)」 たなか 「百日紅」 中村めひて ただこの時点で、私が最終ポイントを付与するだろう作品は2篇に絞られていた。「六月を雨に少女の祈る」の森下ひよ子さん、「水葬」の谷竜一さん。連続した時の大河のひとしずくとして、明らかに強度を持つテーマのもと、それを支える技巧面でも頭ふたつ抜きん出た作品だった。 最終的には、谷さんの水流が森下さんのほとばしる熱量を上回った。詩の言葉がどこに流れていくかを考えたとき、この2つの作品が持つ脚力の違いは大きい。森下さんの作品が持つ切実さや良さは認めた上で、圧巻、熱量では汲みきれない荒れが時に読者を遠ざけることがあるだろう、そこがクリアできないものを推すべきか否か最後まで悩んだ末このように決断した。谷さんの作品はその期待をこめるにふさわしい言葉たちであった。生き、歳を重ねるという普遍、日々のなかに見え隠れするさま。贅肉の削ぎ落とされた言葉運びによって観念と事象が見事に絡み合い、あらゆる描写がみずみずしく生命を映し出している。 私のなかで次点となった森下さんが他の審査員によってポイント付加されたため、私からの審査員特別賞は該当なしとした。 なお、特別賞にはあたらなかったが、heさん「ヘルタースケルター」も印象的だった。視線の構成が興味深い。広い部屋のすみから始まりすべり台の頂上から見下ろすところで締められる、俯角の美しさ、その狂いのさまが秀逸。 上記の他には、如月さん、流川透明さん、鈴川夕伽莉さんそれぞれ丁寧に言葉を紡ぐ書き手で印象に残ったことを記しておく。
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