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「木陰」田崎智基 タイトルからスムーズに作品に入っていける導入部の造り、それ自体は珍しいものではないかもしれませんが、文脈が恰も複雑骨折しているかのような錯覚にも陥りそうなテキストから翻った時に、読み手を意識した(或いは、せざるを得なかった)作者の(言葉が適当かどうかわかりませんが)「譲歩」は、一先ず成功していると感じましたね(読者に寄り添おうとする意識や姿勢、それが実際上の作者にあったかどうかは置きますけれども、それが必ずしも迎合や堕落に繋がるわけではない、と私は思っております)。 直接的な欲望や概念、まぁ色恋でも何でもいいですが、そうした主題から一歩も千歩も退いたところから書かれている、奇妙に折り畳まれた実存についての作品でしょうか。俯瞰した場合に、さしたる長尺でもないテキストは、辿って初めて平坦ではないと気付きますが、巧妙に隠されているわけでもない視線の持ち主であるところの発話者の表情や手足がおぼろ気ながら掴めそうになった瞬間に、異なった方向からの(意味をすり替えられたかのような)新たなる示唆が邪魔をする、これを面白いと感じるかどうかには個人差があるでしょうけれど、例えば不可知のものを、その輪郭だけによって実在たらしめようとする試み(かどうかは、もちろんわかりませんが)には興味深いものがあります。 「現代詩が好きな読み手」、というよりは「現代詩しか好きではない読み手」にのみ支持を受けそうではある(これは藤本さんの応募作品にも同様の印象をもちました)にせよ、少し待避したところから主題を限りなく婉曲に対象化しようとするようなユニークな筆であることには間違いありません。また、誰にも似ていない、そして、テーマを全く選ばない、そこも評価されて然るべきといいますか、現代詩の領域にあっても浮きかねない筆、その先行きは楽しみです。 しかしながら、みずみずしい情感を描けもした筈の痕跡は逆に醒めてしまう。そのバランスの配分に苦心したであろうと窺える箇所もあり、そこはもっと徹底した擬態でもよかったのではないかな、と私は感じました。 あとは、 >複雑系の音 やや安直に置かれてある言葉で、テキスト自体の質量を損ねているような気がします、もっと練れたのではないかというか、意味を過信しないこの作者らしからぬ不手際のように感じた次第です。直前のセンテンスにも「複雑」は登場するので、ちょっと脇役が煩い感じもあります。いや、何らかの効果を期待していたにせよ、それは少なくとも私には無効でした、外観として美しくないという意味でも。 不明瞭な文脈で、(何を伝えるか、ではなく)いかにして不鮮明に伝えるか、そこにこそ労力を注ぎ、結果として、なにやら不穏な空気を漂わせている本作は、さながら読み解く喜びを満たす機能が劣化しているかのような印象もありますが、実は、それが擬態の詩人たる作者の企みであり狙いでもあるのかもしれません。テキストの孵化は、或る日、唐突に閃くかもしれないし、生涯わけのわからない置いてきぼりをくらった気分のままかもしれませんが、それは読み手各々の事情でしかないですから。 故意に伏せられた意味は、けして隠匿されているのではなく、ユーリカと共に在る。詩を読むことは、何かを理解したり納得したり共感したり(であっても構わないですが)するだけではないのだ、と。 御応募、ありがとうございました。
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