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東京から車で約7時間・・随分な長旅である。翔は典子の両親に預け、二人で行く事にした。まだ幼い翔にはそんな長旅は無理だろうと判断したからだ。予め村長に電話を入れ宿の手配等を頼むと 「折角、里帰りされるのだからお金なんていらんよ・・・私の家に泊まればいいさ」 と、厚待遇を約束してくれた。 最寄りの高速道路から村まで2時間半は走る計算である。車で山を越える度に故郷に近付く気がし、何故か落ち着かなくもなっていた。 そして村へ通じる最後のトンネルを抜ける。眼前に広がる田園風景は正に”日本のふるさと”を象徴するような風景である。私達は一先ず村長に接触する為に役場へ向かう事にした。典子は助手席でどこかわくわくしたような顔をしている。 何故?今回、ここへ来ようかと提案したかと言うと私は実は旦那の何も知らない・・・。彼は結婚した時には既に両親を亡くしていた。彼のルーツを見てみたくなったのかもしれない・・・。今まで彼自身から余り語る事の無かった故郷へ・・・。 山を降りてから数十分、役場への道が分からず田園の中をさ迷った。 「全然覚えてないよ・・・自分でも何年ぶりに来たか忘れてる位だからね」 典子はそんな事も気にしていない様子で 「あそこに人がいるから聞いてみれば?」 と、田作業をする男性を指差した。 車を止めると典子も降りて体を伸ばすようにしながら空気を吸っていた。 「すいませ〜ん・・・ちょっと道を聞きたくて・・・」 麦藁帽子にランニングの男は作業を止め私達の方へ近寄ってきた。 「お仕事中すいません・・・」 歳の頃は30代半ばだろうか?意外にもこの村に着いて初めて接触した人物が若く驚いた。 「なんだ?例のお客さんか?どうした?」 どうやらこの人物は私達が今日やってくるのを知っていたようだ。 「あの・・・僕らが来るの知っていたんですか?」 不思議に聞くとその男はなんとも言えない目つきで典子を舐めるように見てから 「小さい集落だからな・・・世話になるんだろ?皆知ってるよ・・・で、なんだ?」 「あっ・・・役場に行く道に迷っちゃって・・・教えていただければと思って・・」 すると男は顔の汗を肩から下げる手ぬぐいで拭き取りながらぶっきらぼうに教えてくれた。 礼をして車に乗り込むと 「なんだか変な感じの人だったわね」 と、典子は不信感を口にした。 「外界から閉ざされている村の人だからな・・・」
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