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随分昔に土砂崩れでこそぎ落とされた斜面の頂部には山林の切れ端が少し残って軒のように張り出し、底部は土砂に下草が生い茂って小さな広場になっている。その周囲は背の高い元からの林で、天然の軒の下に入れば外界から切り離されたような空間を作り出している。 枝葉に触れぬように気をつけながら彦八が様子を伺うと、今まさにボロ屋を抜け出した二人が腰を下ろし警戒を解いたところであった。 「たけ。長く間をあけてすまなかった」 「もう少し遅ければ私の抑えはきかなかったでしょう」 やはり、という予想はしていても、彦八の受けた衝撃は小さくはない。 「それで、どうなのです」 「うん……」 お竹の言葉は問い掛けではなく確認といった口調。そしてその問答はこれまでにも幾度かあったようで、桃太郎の言葉も返事ではなく答えあぐねているような相槌に聞こえた。 「はっきりなさいな。私はもうすぐ先行きが決まってしまうのですよ」 彦八は違和感を深める。 普段は従順で家事に勤しみ、親同然の老夫婦を労る物静かで働き者のお竹が、強硬な態度で桃太郎に接しているのだ。 「正直なところ、親父に鍛えられることは面白い。日に日に力が付き、何かを得ていつかのために積み重ねることは俺の目標や生き甲斐になりつつある。 だが……」 桃太郎は心中を確固たるものにするかのようにお竹を正面から見据える。 「お前を求める気持ちも変わってはいない。この世の何物よりもお前が欲しい」 しかしお竹の答えは彦八を驚かせた。 「その障害が私たちの親であっても、切り捨てて奪えますか」
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