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(勢いよく上半身を起こした相手と視線が交わるのも一瞬のこと、拒絶混じりの怒声をこちらに叩きつけると何かを断ち切るかのような、或いは切り捨てるかのような足取りで家具屋から出て行くその後ろ姿を、立ち上がりながら見送る。……相手が馬車に乗り込むまでの間に追いついて手を取るだけならば、【紗ノ祓】を発動するまでもなく容易に実行出来た。だが、彼女のことを理解していない今の自分が仮にそうしたところで、彼女をより深く傷つけるだけで彼女にとって救いとなるようなことは何一つ出来ないだろうと──心を掻き乱す感情のうねりによって歪められた彼女の表情を思い返し──非常に残念ながらそう判断せざるを得なかったため、この場で彼女を引き留めることは出来なかった。そうして己の至らなさに深く嘆息しながら腰を屈めて床へと手を伸ばし、そこに落ちていた一枚の黒いカードを拾うと姿勢を戻しつつ表面に書かれた『Iris』という文字列を見つめる。持ち主の魔力が籠められていないので他の情報は何も記されていないが、帝都にある『Iris』という店名のジャズバーについては聞き覚えがあったので、彼女(もちぬし)の職業から考えて十中八九このカードは件のジャズバーに関するものであろうと判断しつつ、床に落ちた際に付着した汚れを指で撫でるように拭ってから軍服の胸ポケットに仕舞い) 「……すみません。こちらを頂きたいのですが、よろしいでしょうか? それと、包装は贈答用のものをお願いしたいのですが──」 (彼女の怒声に何事かと店の奥から戻ってみれば、先程までそこに居た筈のお得意様の姿はどこにも見当たらず、インペリアル・スターナイツの元帥が一人で佇んでいる……という状況に戸惑っている様子をありありと見せている店主のほうへ振り返ると、思考を切り替えて安心してもらえるよう何時もの微笑を浮かべながら商品の購入を希望する言葉を告げると共に、手のひらを上向きに掲げて目当ての商品を指し示す。その手が向けられる先にあるのは勿論、熊の木彫り像……だったのだが、しかしそれは自分が目を輝かせながら見つめていた新作ではなく、既に購入済みである筈の鮭を咥えた最古(ロングセラー)の作品で──) >退室
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