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のび太「ただいまー」 ドラ「おかえり、のび太くん」 のび太「あれ?ママはー?」 ドラ「ママなら今おつかいに出てるよ」 のび太「良かったー。ジャイアン達と遊ぶ約束してるんだ。今のうち出かけよう」 ドラ「なら僕も行こうかな」 のび太「えぇ?なんだって?」 ドラ「どうしたんだいのび太くん?どうせいつもの空き地だろ?ドラ焼き買いに行くついでだからそこまで一緒に歩こうよ」 のび太「なんだドラ焼きか。いいよいいよドラえもん、一緒に行こう」 ドラ「変なのび太くん」 そうは言ったものの、ドラえもんはさして不思議がる素振りも見せず、のび太の隣を歩き始めた。 ――どうやらドラえもん、僕達がしたことには気付いていないようだな。 のび太はほっと一安心し、ドラミに愚痴を喋るドラえもんの言葉に耳を傾けていた。 やはりロボット、思考回路は単純に出来ているらしい。 人間の微妙な感情の変化に対してはかなり鈍いようだ。 ――この調子なら、出来杉のこともこのまま隠し続けられるぞ。 のび太がそう思った矢先、ドラえもんがまるでタイミングを計ったかのように、出来杉の名を口にした。 のび太は自分の心臓がぎゅっと収縮するのを感じた。 ドラ「そういえばのび太くん聞いたかい?出来杉くんが昨日から行方不明らしいんだ」 のび太「あぁ聞いたよ。どうしたんだろうね」 ここは余計なことを口走らないよう、話すのは必要最低限の言葉のみにしておこう。 のび太は小さな脳をふる稼動させ、対策を導き出した。 空き地に着くまであと少し。どうにかこの話題をやり過ごすしかない。 ドラ「心配だなぁ。誘拐とかじゃなければいいんだけど」 のび太「そうだね、心配だね」 ドラ「あ、そうだ。僕の秘密道具で出来杉くんの居場所を探れば…」 突然、ドラえもんは立ち止まり、腹部の辺りについたポケットを探り出した。 鼻の下が伸び、間が抜けた顔の造りをしているわりに、このロボットはなかなか役に立つ機械をたくさんポケットの中に持ち歩いているのだ。 のび太は焦って、思わずドラえもんの頭を思い切り引っぱたいた。 ドラ「や、何するんだのび太くん」 のび太「だ、駄目だよ出来杉の場所を探るなんて!」 ドラ「どうしてだい?」 ドラえもんが機械的な眼差しで、のび太の顔を凝視する。 まるでそこから彼の嘘を読み取ろうとしているかのように。 のび太の額には、大粒の汗が滲んでいた。 のび太「だ、だって、出来杉みたいにしっかりした奴が誘拐なんかされるわけないし。きっと事情があって1人になりたい気分なんじゃないのかな。それだったらあまり個人的なことに他人の僕達が関わっちゃ駄目だよ。ドラえもん、デリカシーがなさすぎるぞ」 ドラえもんは無言で何かを考えているようだった。 しばらくすると、納得したのか再び歩き出す。 のび太「え?ドラえもんどこ行くの?」 ドラ「何って、どら焼きを買いにいくんだよ。出来杉くんを探すのはもう少し様子を見てからにする。のび太くんの言う通りだった。僕はロボットだから人の気持ちに対して、いまいち配慮に欠けているみたいだ。ごめんよ、のび太くん」 のび太「そうか、わかればいいんだよ」 のび太の中にはドラえもんとの言い争いになった場合に関して、始めから勝算があった。 ドラえもんはロボットコンプレックスなのだ。 どうせロボットだから人の気持ちがわからない、ロボットだからデリカシーに欠ける。 そう言われるとドラえもんが何も言い返せなくなることを、のび太は心得ていた。 ようやく空き地が視界に入った。 剛「おう、のび太。来たか」 ドラえもんは少しの間のび太達の様子を観察していたが、どうやら今日はのび太をいじめるわけでも、剛がリサイタルと称して騒音を発するわけでもないとわかると、和菓子屋へ向かって歩き出した。
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