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蜂蜜みたいな月、と、自転車こぐ吉川さんに言ったら、ええ?いつもと一緒だよ、なんて、取るに足りない。 わたしには蜂蜜が今にもたらたらとろとろたれてきさうに甘くみえる。夜風と自転車のスピィドにふかれながらゆれながら、吉川さんの古ぼけたGジャンをつかむ。吉川さんとわたしは同じアルバイトだけど吉川さんとシフトが一緒になることは少ない。あんまし会ったこともない。今、吉川さんの自転車の荷台にまたがっているのだって偶々でしかない。偶々。わたしが友達とごはんを食べて家に帰っている途中。やたら長い信号を待っていて、吉川さんに遭遇したのだ。たがいに会ったことなんてそんなにないのに、顔を覚えていたのが、なんだか小さくうつくしいことにおもえた。「どこに帰るの?あ、おなじ方向だしのっけてってあげるよ」吉川さんは、ほら、と体をひねって銀の荷台を軽くたたく。わたしはおそるおそる荷台をまたぐ。「あんた軽いね〜」私をのせて自転車は静かに動き出す。信号はちょうど青に変わった。「でもこの前3kgふえてたんですよ」「え、全然だよ、そんなもん。ふとってる内入らない」笑いながら、首をふりふり吉川さん。 わたしは。 誰にも言ったことないけれど、吉川さんを初めてみたときから、なんだかいっぱいやりたいことがある。吉川さんと旅に出たい。京都の桜がみたい。大きなしだれ桜だと、なおいい。吉川さんと映画がみたい。ミニシアターのものがいい。なあんにもおきない、けどいやに色のきれいな映画がいい。吉川さんと、ごはんが食べたい。洋食でも和食でも中華でもいい。すごく安い食堂でもいい。吉川さんと椅子のある本屋へ、吉川さんと電車で海へ、バスで山へ。 「あの、今度、ご、はん…食べにい、いきませんか?梅、酒のおいしいところが、ある、です」震えてしまい、妙なところで切ってしまったり、音があがってしまったり。口の中でこの言葉はとどまってしまったかと思うくらい小声だったと思うのに 「ああ〜いいねえ!わたし梅酒、好きなのよね〜」楽しみね、いつにしよう?吉川さんは、ぐいぐい自転車のスピィドをあげる。 わたしはそれにのせられて。そっとGジャンの背に額をつけた。
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