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見るとウルトラの料理長の胸元には 一口サイズで、そして何故だかきっちりとした正方形のほくろが 雲母のように不思議な輝きで私の顔を映していた 「押してみな」 吸い込まれるように人差し指で触れると ほくろはゆっくりと浮き上がり その形状はピラミッド型の小さな立体が 皮膚に埋め込まれたものであることが次第にわかった ぽろり、とほくろが宙に吐き出されてしまうと あわてたようなウルトラの料理長の その目は心持ち潤んで見えた 「3秒で!」 え? 「はやく、はやく食べるんだ!」 (さ、3秒ルール?) 黒いピラミッドは内部を星屑のようにきらめかせながら 1回、2回、柔らかに床を跳ねている もしこれが食べものであるのならば、料理長ともある人が そんな不衛生で、出来の悪いギャグに固執していてよいものだろうか しかし私は、飛び跳ねるほくろをダイビング・キャッチすると ためらう間も与えられず口へと放り込んだ すると、どうだろう 料理長の胸元に埋められていたピラミッドからは 彼の味に対する表現方法と、纏わる意思 そしてそれに関わってくる私の存在、希望と迷い・・・地球平和 すべてが味覚として口の中に広がっていった 3年間必死についてきて、叱られるのは下働きの無作法ばかり おまけに3分いたと思えば、どこへやら消えてしまって 次に会えるのは翌週と決まっている 料理らしいことは何ひとつ教えてくれはしなかった 「・・・ごちそうさまでございました」 恍惚として床に手をつきながら 溢れ出る感情を抑えるように礼をいい、私は立ち上がった 本日の予約席からは成人式帰りと見える客が 「これどうやって食べるのかしら?」 ピラミッド型に盛りつけられたフルコースの一品を指して、囁くのが聞こえた 「いくらでも、時間をかけて」 私は静かにつぶやいた 「言ってもわからないだろうから」 調理場に目を戻すとウルトラの料理長はもう上着を着ていて ドゥミグラスソースの味を見ていた 白く張りつめた背中は、あの奇妙なほくろの存在も忘れさせるほど清潔で いつもの厳しさが、よりまぶしく発せられていた あともう少しで3分 ついに私は、涙を瞳に留めておくことができなくなった
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