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多くが壊れ ひとつ残り うつろいを生み 栄えさまよう 曇の数だけ夜があり ひとつひとつの雨のたもと 光は布にひらかれて 足跡のない歩みを照らす 背の花ふたつ はざま波 坂の下の 海鳥の鈴 持ち替えた楽器に弦はなく 音のかたちの洞をたたく 砂のひと粒ひと粒に 忘れられた雷がある よろこびの奥によろこびがあり そのむこうに手のひらがあり その奥にひとつの笑みがあり 一緒に絵を描こうと言う たどりつかない虹のまま 花は低い曇から降りる 音の指が踊りのように 海の静けさをなぞっている 枝が枝にこだまする 色はさらに水に近づく 乾くまもなく筆は濡れ うつろいさまよう唱を描く 雨の数だけ街があり 互いの背の水紋を呼びあう 布は鳥にひらかれて 壊れる前の世界の絵を見る
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