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昨晩は錯乱して まるで 密林で春をひさぐ女たちの 割烹着に付いたシミのよう 木漏れ日の夜を塞ぐバスクが なりをひそめ フランス調の哀歌が響くとき 騾馬に詩歌をつまびらくエルフこちら向き 毛づやよいか 遥か彼方に血潮ふりまく朝か ミクロを通して聞こえる声が波濤になり 五等星を飲み込んだ * 愛と心臓のふるさとを追い 辿り着きたるは盲目のタランチュラ 穏当な二重まぶた潰して猜疑食え 千年経ってバラバラになった 毒牙 見る影なく それは一本のしらたき さぶらうは液体窒素のような 地層のぬくもり (にべもなく包まれて あのクモはたぶん 蓄膿症 だったのだろうね) * しゃがんでハーネス見つけた鬼 体長二センチ、赤く、ツノ一つ、棍棒一本 少しアフロ、父のにおい、甲高い声 なにする、なにするですかという ハーネス、齢二歳、青い瞳の男の子 鬼を潰して食う、歯ごたえよく、コクがあり 少し公園の砂に似ている せまる朝餉の時 母の手ずから作った * ピーカフは ブリキを噛んで枯れた 餞別にもらったムグラを編んで 褥を作ろう アカネ科の多年草なんです 細長い葉が輪生します おぼつかない手で 揉む根の吸い上げる水が 汚わいを含んで それはピーカフ 雨がさびを流さないうちに なめる ひそやかな青ざめた甘さを 砕く紐と 季節のおとずれが 次はあなたを解き明かそうとしています
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