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忘却は望まなくとも訪れる あなたが恋をしたらきっと海に行くだろう 愛しい娘に貝殻を拾ってあげるだろう そうしてわたしのことを少しずつ忘れていく わたしは輪郭を失い始め 痛みはしだいに引き伸ばされて あなたはわたしを忘れていく あなたの一日にすっかり居場所をなくしたわたしは 昼下がりにあてもなく一冊の書物を開く ページの端を持ち上げると 林道に溢れる緑いっぱいの呼吸に包まれて わたしは膨らんだ袖をリボンで結んだ少女になり 水色のワンピースを風に揺らし駈けていく 林を抜けると大地に持ち上げられた海が広がっている 眼下には真夏のデッキ 夏の影を落とし面影は琥珀に乾いて わたしの腕は波すれすれを飛行する 記憶に潮騒が結ばれて 悲しいくらい冷たい星空に打たれていた花を思い出した 海岸沿いの薄紅の花だった 硝子のペーパーウェイトがカタリと外れて小波が立ち ページの隙間から一頭の蝶が飛び立つ 夏空は柔らかく窪みながら しだいに相称の斑紋を呑みこんで そのうちに、その形を見失ってしまった 靴跡の消えた砂浜で わたしを忘れた少女は素足のまま潮騒を聴いている
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