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私は独りで自慰をするしかなかった 匂いなら今もそこここに 残っている けれど 本当はそんなもの もう なんの意味もない 忘れない ぬるい風が頬を撫でていた あの真昼 二人は なにもかもから隠れてしまおうと決め 足元の影を折りたたみ 愛しいということだけを食料にして 堕ちてゆこうと 誓った それ以来 愛しあうたびに 部屋にあったものは どんどんと絶えていった 植物は枯れ 食物は腐り ひとつ またひとつ 命が命を落とすたびに 私は悦びの声をあげ ますます激しくあなたを求めた 気づいていたのね その先のことを 惜しくなったのね 自分のことを あなたは私の目を盗み 折りたたんであった影を広げて こっそりと 太陽と時計のある場所へ 帰っていった そうよ 私のものにしてしまいたかった 私だけでいいあなたであって欲しかった 私の命になってしまいたいあなたを願っていた 阿部定になれなかった私が 独り残された孤島 なのにほら 匂いなら今もそこここに 残っていて それでまた欲情して 濡れたりもできてるなんて かなしい
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