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ぬるくやさしい沈黙が窒素充填に似た密度で 午後の長ったらしいまどろみに流線型のまぼろしを残す ひとすじの線を長く引くように トランペット吹き続けるチェットベイカー 伺うような赤蜻蛉の羽のリズム(ブラシ・プレイと時折シンクロしてひかりを跳ねる) いってしまうものたちが強く微笑む八月 忘れるころには頬伝う汗が嘘になる 詩面になるような心を リアルにそうと確かめたことなんかない 羽ばたきの速度が足りないやつらは 同じところで同じかなしみを違うみたいに歌うのみさ 今はただ犬みたいに口を開けて世界を穴ぼこにするような夕立を待つ ウィークエンド 日々擦り切れるトランスミッターに怯えながらひとつの約束を交わした 泡のようなものにこそ食い下がってしまう、それこそが― それこそが本当だってとっくの昔に判ってるはずじゃないか(きっと、類人猿が枝で火をおこし始めたときから) 水を連想させない 川べりでヤゴが孵化する、次々と、次々と、螺旋を繋いで、明日噛み切るだろう 小虫の事に思いを馳せて それは人知れず胸中を流れる涙とブルー・インパルス・ショーの様にいくつかの線を互い違いに―互い違いに描いて 次々と、次々と、孵化して、孵化して、孵化して― 程なく手の届かない高みまで あっという間に羽ばたいてゆく そんな風になれたらいいのに、そんな風な潔さを持って― 鋭利な歯を、食い込ませることが出来れば どうして?狂ったように夏の日だ、そんな熱など俺は望んではいないのに ギリギリまで詰め込んだハードディスクみたいに鈍重に自転している 「死ねるやつから死ね、死ね、死ね」と デヴィッド・カヴァーデイルみたいな声で歌うツクツクボーシ ゴダールの手法のような休日ののぼせ 挨拶はいずれまたゆっくり、とでも言わんばかりに いつかすれ違った懐かしい誰かから突然の私信が届く メールアドレスにそいつらしさを探すのは エレクトリカル・エイジのすることじゃない ひとすじの線を長く引くようにトランペット吹き続けるチェットベイカー 何も知らされていない 柔らかい羽の蜻蛉がまた旅に出る ああ、ハンド・クラップのように死んでいく透明な羽、ねえ、ねえ お前のかなしみを見るにはいくら払えばいいのか教えておくれ 出来る事ならそんな印字をディスプレイに散りばめたい 死ね、死ね、とツクツクボーシ いってしまうものたちがまた 強い力で微笑みながら…
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