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波紋、波紋、億兆の雨音 八百八町の曇天だらぁ、怒声呵々、褌一丁、刺青者が牽く人力車が、ががら、がら 道々にゃ百花繚乱、そこは吉原 然しも、誘蛾灯侘びしく、頓痴気な嬌声も戸の内とは滑稽ぞ あれ見ろ 盲(めいし)の花魁が高楼に居った 誰ぞ三味線、泣かしちょう さて指折り数えたんは、何か 梅に雨だれ、ぽつり、ぽつりと 浮き世流れ世、花びらは浮き流れ 待ち人など忘れんさいな ぽつり、雫 酒呑んでたわきゃないよ 片手に袖持ち、滴りを、掬う真っ白い手 踵が浮いちょう いなびかり どんしゃらり、ど、どんしゃらり しゃらり 濡れた花びら、墜つた ががらん、車を投げて走り寄った 波紋、波紋、億兆の雨音 曇天だだらぁ、願い乞う星もねぇ宵のこの銅鑼に、哀れな姿身を抱く羽目になるとは、ひでぇ血と雨だ、雨、雨だ もうええの、もうええの 嗚呼、わかった、嗚呼、わかった もう泣くな しゃらしゃらり花が雨に舞い散るばかり 舞い散る、ばかりに舞い、散る 嗚呼、桜、晴天に、はらはらと眩む、刺青の肩に女が掴まり、降りた、車、牡丹刷毛が袖もとから落ちたのを、見やる、気づかずに、行ってしまう様子を、ねぇ、姉さん、これ ど、どんしゃらり、どんしゃらり もう泣くな、天理の神さんは見捨てやしねぇ、どけどけ、どけぇ、車輪は捻切れんばかりと、百鬼夜行の暗天下、挺身の牙、飛沫を切り裂き、背中の龍がごうごうと湯気吐き、白い一点になった 雨音が消えた 怒鳴り声も掻き消えた 車の中で 女はうっすらと目を開けた 明るい青空が見えちょう 桜の花びらが真綿のように舞っている 人力車を牽いているあん人の背中は脇目も振らないので 嗚呼、ねぇ、と声を掛けようとして 躊躇って俯く 閉じた右掌が開いて、そこに花びらが落つた ゆっくり握るように指を折ってゆく はと、する 人力車は止まっていた あん人の背中も無い はらはらと桜が舞って 不安になり車から降りようとしたら、ぽつりと温かい滴が、手の甲に当たり その手をあん人が ひっ掴んだ 暗い、真っ暗になり 抱き抱えられ 耳、耳元でおおうおおうと声がした 滴がまたぽつり、ぽつりと 嗚呼、ねぇ、花びらを 嗚呼、ねぇ
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