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瑞々しい深緑へと注ぐ光陰が 複雑幾何に斑紋する中で 険岩流水が脈動している ハンモックで胸の上に神秘の祈りを組み 眠る女の唇が ラ、の音を発したのか それとも 夢の淵で無心に触れた鍵盤のキー ピンと立つ耳 白くて大きな犬は 血まみれで仰向けになっている俺の耳元に鼻を寄せた 「おまえが欲しいものは何だ?」 乾いた血で塞がった両眼がバリリと開く 死にたくなるような赤い夕空 いや、それは眼前で飛沫いた返り血 驚きに見開かれた彼の瞳を見たその時 彼のその一生涯の 魂の記憶のすべてが 数十年の歳月が わずかな瞬きの間に 俺の中に集束しフラッシュバックした そして死の間際の壮絶に 俺は俺を見た どうすればいい 今度もラ、の音 長い余韻、誰か、美しい水辺の静寂(しじま)、高音の キーを、女の素足が青草の上に降りる、全身を戦慄かせた「俺は」 悲鳴にはならない悲鳴をあげてんのは、俺か、白くて大きな犬の、右眼は空のように澄んだ碧、「俺は」、ラの音、「どうすればいい」、無人のハンモックが揺れ、左眼は、音、ルビーのような深紅、背後からの一閃、をかわす、「どうすればいい」、犬が俺の頬を舐める、ラ、鍵盤、あの曲は、ラ、ラ、ラ、懐かしい 十字架を背負って丘を登る人の、夕陽に照らされた横顔は、誰だ、あの何十万の兵団を統率し戦場へ赴くその人は、誰だった 「おまえが欲しいものは何だ?」 意思の無い鉄と骨がガチャガチャとぶつかり合う中を走った、本当に赤い雨が降っていた、自分の怒鳴り声が聞こえない 汝に主のご加護があらんことを、誰だ!、俺の味方は誰だ!!、今、殺したのは誰だ!!!、ガチャガチャガチャガチャ 女の髪を引っ張ってゆく、誰だ、首の無いあれは、誰だ、助けて、誰の腕だ、ラ、目眩、紋章だ、犬が俺の頬を舐めた、今、殺したのは、誰なんだ、燃えている空が、鍵盤が、真っ赤に、まただ、天使が、ラの音が、俺は走る、祈り、白い小さな犬を追って、「教えてやるよ」、無数の飛行機の群影が、銃声が、回転ドアが、悲鳴が、俺が、おまえが、誰かが、汝、ラ、ラ、ラ、ラ、太陽、素足を水に浸した、動かない母親に、死にたくない、抱かれたまま、水の波紋、掌に打たれた釘、「教えて」、泣いている、ラ、誰か!、ご加護があらんことを、幼子が、「教えてやる」、爆音が、塔が、黄金の射程を描き、俺は追いかけ、灰が降り、あの曲が、ラ、ラ、吹き飛ぶ、白いドレス、ラ、あれは、魂の記憶のすべてが、ハンモックから落ちた聖書が、飛行機が、ラ、ラ、ラ、今度も タン その物音に女の華奢な背中が振り向く 白い獣が傍らの岩から向こう岩へ跳躍していった 俺と女の視線が、ラ、一瞬だけ交錯する その後、どこをどう走ったかは知らない 白い大きな犬は 断崖絶壁と満月を背にした覚悟 待っていたかのように そして今、飛び降りようとする影に魅入られ その尻尾を掴もうとして 「俺は救いたかったのだ」 と思った 俺は今、迷わずに走らせているものを 信じる
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