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真っ向降り注ぐ太陽の光、日付が嘘臭く思えるほど遠く無邪気な夏、俺と君のてのひらの中でルビーのようなアプリコット どうしてそれがあったのかなんてもう知らない、君と俺がそのときどんな風だったかなんて、もう、覚えてないけれど その一瞬、その一瞬がまるでサンシャインを迎え撃つようだった、まるでルビーのようだったふたつのアプリコット、俺たちはわけもなく大声で笑いながら 不親切な大地を海の見えるところまで走り抜けた 国境を越える列車が唸りを上げる線路をずっと横目で見ながら 君はここではない場所のことを考えるのに夢中だった、俺はまだほんの子供で だけど俺たちはパートナーとしちゃ最高の部類だったさ 路上の果物屋でオレンジをふたつ買った、海を見下ろしながら激しい風に吹かれてそいつを齧ると 甘酸っぱさに宇宙まで飛んでいけたものさ 俺と君のてのひらの中でルビーのようなアプリコット、思えばそれは物質化した約束のようなもので、『きっとだよ』なんていうよりはずっとイカシてた 君がフレアスカートを翼のようにはためかせながら大国行きの列車に飛び乗ったとき そいつが俺の夢まで連れて行くようなそんな気持ちになったものさ あのころ小さなレターセットで俺たちは永遠を知ることが出来た、君からの手紙にはいつもあの アプリコットのイラストがくっついていたっけ 『約束は続くんだ』というよりもずっとイカシてた、ひとつの手紙にふたつの返事を書いた 俺は言葉を並べるのがあんまり上手くなかったから 短い文章につまらないイラストを添えて…俺たちには距離など問題ではなかったんだ いつか、忙しさにかまけてお互いがペンを取ることを忘れるなんて あのときの俺たちには想像もつかない愚かさだった 数年ぶりに届いた手紙に添えられていたのは ぼろぼろにくすんだ本物のアプリコット、まさかそいつが あのころのやつだなんて思いもしなかったけれど どうしていたんだい 上手くやれたのかい 想像していたよりも 現実は難しかったかい 永遠の約束は 君を辛い気持ちにさせたのかい ウェディング・ドレスを着るんだと君は言った、新しい実がなるころ こっちの街でウェディング・ドレスを着るんだと それを裏切りだなんて 俺にももう思えなかった あの時、俺と君のてのひらの中でルビーのようなアプリコット あんな風に太陽を迎え撃てる日がいつか来るんだと思っていた 海から吹く風のことすら俺たちは忘れていたんだ、幼さを恥ずかしいと思うことも出来ず 俺たちは大人になってしまったんだ ひとが住んでるなんて信じられないくらい馬鹿でかいアパートメントの前を通りすぎながら 君は少しだけ歩幅を狭くした 並んで歩く事が怖くなっていたんだ、俺には判るよ 俺は そうしなかったってだけのことだから、真っ向降り注ぐ太陽の光、だけど 大きな街には、物陰が遮るものが多すぎたんだ…幼い夢が見えなくなってしまうくらい、ふたりの声が 喧騒に 隠れてしまうくらい
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