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見放されたものたちが街外れで群れながら 見放されたものたち特有のメロディで 見放されたものたちの歌をうたう 見放されたものたちの声は高く、変声期をやり損ねた失敗作の世代 高く、そして細いせいで 届くべきところへは届かずに虚空へと立ち昇る、荼毘にふされるイデオロギー、少々強情な 煙草の煙ぐらいの在り処 あんた、昨日ここいらあたりで、笛を吹いていたでしょう、駄目だよこの辺一帯にゃ 良くないものたちが潜んでいるからね 長く吹こうものなら喉笛掻っ切られるよ あいつらは無益な殺生をするのが大好きだから、あんたの死体は身包み剥がされたのち 野晒しで腐ってゆくよ 死体にたかる虫を見たことがあるかい やつらはあんたの形に沿って集まるんだよ、遠くから見ると真っ黒いあんたが すやすやと寝息を立てているように見えるんだ、近寄ると小さなモーターのような音がして あっという間に喰いかけの肉の塊になる そんな風になりたくないだろ?それ以上はやめて それ以上はやめてここを離れるんだよ 老婆、木の皮のように痩せた老婆よ、俺は 見放されたものたちがうたっていた歌のことを知っているんだ、俺が手にした笛の音色を聞いたかい、それは見放されたものたちが高く細い声でうたっていた歌と同じものなんだ 「あんたはこの土地の人間なのかい」 「違うよ」 「それじゃああんたの身内にこの地のゆかりのものが誰か居るのかい」 「そういうところだよ」 「親かい」「違うよ」 俺の妻はここで産まれたんだ ここで産まれて ここで産まれたせいで 辱められた 何度も何度も 何度も何度も 何度も何度も 辱められた 気が触れちまってね あんたが言ってたみたいに 喉を掻っ切って死んだよ 俺たちのささやかな住処の 床という床を血まみれにしてね 握り締められていた 彼女の存在が 辱められた存在が 手の中に 小さな手の中に 悔しかった 悔しかった 悔しかったんだ 甘くすえた匂いがした 甘かったんだ 本当だよ 血の匂い嗅いだことあるかい 俺が帰ったときに、俺がそれに気づいたとき 女はこの歌をうたっていた、この歌をうたっていたんだ 喉から漏れる息にまぎれて ほとんど、聞き取れなかったけれど 俺には判らなかった 見放されたものたちの歌のことを 見放されたものたちが 高く細い声でうたった歌のことを 高く細いその声に、空気の漏れるその声に似合いの笛を探して 何度もメロディをたどったんだ 何度も何度も 何度も何度も 何度も何度も 何度も何度も 木の皮のように痩せた老婆よ、知ってるか 血の匂いは 渇くことが無いんだ
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