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花の名前をひとつ忘れる 波の音が庭を巡る 部屋の空をひとつ名付ける 花が花をなぞる 目を閉じ 聴いている 指先へ指先を唱うかたち 羽の輪を呑み 誰もいない明るさ 傷のたしかさが昇るのを見る ひらいた腕から 虚の胸から 似たものは無く 得たものは無く ひとつの手のひら 何もない手のひら 花の花のなかに立ち ただ滅するを見つめている 約束が燃えてゆく 心地良さが燃えてゆく 誰にも何にも触れぬかたちが 果てに至るたび指となり たどり着いたものひとりひとりの そのままをそのままに受け入れてゆく 無数の名前の流れのなかから ある日ひとつの花に触れる こぼれんばかりの 名の無い指 砕き 砕かれ なおつながるものはそこにある 気づかぬうちにつながり こだまし 震えるものはそこにある 定めなき色の奔流を ひとつのかたちに集めたように 小さく淡く 名を失くしつつ 指を伝う花のたかまり 花に沈む 指のはじまり
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