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1 (殺人の風景) 廃虚の暗いビルの屋上に 子供たちは整列する みな顔を伏して 順々に飛び下りていく 曇り空の下に 子供たちの生命が散っていく 夢のように感慨なく 等間隔に 2 血液の広い空に 小さな脂肪ブロックが投げ出され漂っている 上下もなく左右もない液体の宇宙で スケールのないこの世界では 宇宙の遊星とこの肉片は等価 魅力的な「殺人事件 探偵 ワトソン 警察官 被害者 犯人」 ・・・退屈な(捜査、立証、報道、世論、判決、忘却、怨嗟) スプーンで掬って排水溝のぬめりを食べてごらんなさい 雨の降る生温い湿地に立ち尽くしてみなさい 農薬の濃いキャベツの葉を炒めて食べなさい そうした悪趣味が私の体に留まり 兄弟も恋人も両親もみな それを慈しんでくれた 3 白い坂道があらわれ 私は見上げながら上っていく ハレーションを起こしそうなほど眩しい そうした夢は懐かしい思い出の中の未来へと繋がっている 覚えている地名 (ウエノ ヤクモ ミゾフチ ゾウシガヤ ノゲ …) そうした名を全て捨て去り 薬品の力を借りてでも 殴られてでも どこでもない場所へ邁進しようとした彼ら 私は彼らを暴き ジョンやスコットや太郎という名前を知り覚えた 残酷なことだったのだ いま私は誰かの借りているマンションの一室で意識を失い もう二度とこの部屋を出ることもないという感覚に酔っぱらっている こうした時なのだ 白い坂道があらわれ けれど私は意気地なくボーロのお菓子を落とす(よたよた食べ歩きしていたのだった) ボーロはころころと坂を転がり、下方へと墜落していく 4 食べること ああ食事食事食事 むしめづる姫君 あなたも一羽の蛾なのであって 噛み合わせそのものの口で 殴るように魚を噛んで 体液がわっと水中に広がる …あなたはヤゴだったのでしょうか 生まれる前に刻まれた名前という魂への落書きのように 今ではその身の責任という暴力が うつくしい瘴気を帯びて纏いつきます いま宙に漂う虫が一匹 田の上澄みの水面に脚先さっと触れて するかしないかの金属音をたてると 誰かが生殖します 水の中で 波紋と陽の明かりを見上げながら このひかりを補食したのは やがて生まれるあなたの有袋類、あなたの猛禽類、あなたの夕立ち… …あああまり騒ぎすぎると 泥が舞って濁って分からなくなります どうせ何が何だか見えにくかったって 澄んだ水なら私は飲みたいと思います 5 川が涸れるように 森も木々も枯れ 小石たちは徐々に完全な球体に近づく もっとも摩擦しない形 摩擦しきった後の形に 意思もまた摩擦しきると 極小の球になるだろうか 何ものにも壊されず あらゆる風向きに流れる 人が人を食べるのに最も不具合な形 シンクの中の水滴が他の水滴と手を取る早さで 私になにをしてもよいです と言っても 誰にも愛することも抗うこともできない 最小の人間 回し飲みされるビール缶の中にも泳いでいる 小さな殺人事件 その報酬は全員に等分しよう
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