メッセージの編集
お名前
タイトル
本文
山々の からみあう緑に のぼり立つ霧の炎 逃れてきた 小鳥たちのまなざし そして 雨にほどかれてゆく薔薇― 初夏のすずしい空白に しまい切れない静けさが 小石のように 散り敷かれている * 秋へ渡るあの鳥や しずかになったこの蝉は いったい、どこの誰だったろう ああ、いつだって私らは 手紙のように 白く忘れてゆきながら いくつめの初めてを迎えるだろう そして、庭の薔薇たちも さよならと手を振ることもなく あなたと帰ってくるだろう * ふりかえってはいけない音がある 聞いておきたかった夜がある 壁には だれかの置き忘れた九月の風景 そして、かなしい食卓の 白磁の皿に咲くいちりんの薔薇 ああ おまえの歌が割れてしまわぬように 僕の中の水は きっと眠ることはないだろう * 呼んでいる からだのなかで、呼んでいる、血と肉へ 約束のように破れてゆく、なんども なんども、切り取られた薔薇は、母のように 呼んでいる、私のいちばん汚れたところで 眠る私を 憐れむように、呼んでいる 気づくことなく 眠りつづける迷い子を― 聞こえている 薔薇のなかで、聞こえている、浅ましい私は 糸のように辿ってゆく、落ちまいとして 握り締めた薔薇を、おまえだけを 落とし切って 聞こえている、私のいちばん汚れたところで 貪る私を 照らすように、聞こえている 悲しむことなく 貪りつづける敵を―― だれだ、 生きるのは、だれだ、 生まれるのは、だれだ、――― 咲き遅れた 夜の散る水面に やさしくほどけてゆく小鳥たち、そのように なにひとつ 届けることなく、冴え冴えと 赤く、雪は降る * うなだれた手をのがれて 川にほどかれてゆく薔薇の花束 水面に散りしかれた一度きりの庭が つめたく流れてゆく よろこび、純潔、そして愛の色づき 身体の熱が高鳴るほどに すこしずつ、 すこしずつその美しい想いは夢と流れてゆく 行き先をしらない旅びとの夜にも似て そして、降りはじめた 雨の光に灯る岸辺に 時と風に傷めたその羽ばたきを うつろに束ねる一羽の鳥 その瞳の水面に 遠く流れてゆく薔薇は 薔薇はしずかに燃えている * そして星は降り おまえは歌う、また 陽は昇るのだと― ああ、 一寸先の薔薇よ 薔薇のままに照らす光よ 雨の庭 ・ 「手紙」第一通 ・ 薔薇の歌 ・ 「手紙」第四通 ・ 流れる庭 ・ 「風景」imp.7
設定パスワード
画像ファイル
編集のみ可能です
[
掲示板ナビ
]
☆無料で作成☆
[
HP
|
ブログ
|
掲示板
]
[
簡単着せ替えHP
]