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道草の途中、空いたスペースに、仕方なく設けられたような小さな溜め池をみつけた。 中を覗き込むと、エメラルドグリーンを何倍も濁らせたような緑の中を、一匹の赤い魚がふわりふわり、と、泳いでいる。 その優雅な切り返しは、そこが薄汚い溜め池であることを忘れさせた。 しばらく眺めた後、陽が落ちはじめてきたので帰路へと戻った。 翌日、パン屑しか思いつかず、とりあえずそれを持って行ってやった。すると思いの他食べたので、また今度持ってきてやると、一言を一片落として、波紋をたてる。 風の吹く音さえ薄く感じるこの場所に、どうやって辿りついたのか、ふとそんなことを思いながら、遠くの方から射しこむ夕陽を見つめた。 光があたり、赤い魚の鱗は、瞳にうつる夕陽のように、赤く、赤く、光っていた。 それからしばらくたって、久しぶりに、と、またパン屑を持って夕暮れ時に向かった。 辿りつき、すぐに溜め池を覗き込むと、赤い魚は、相変わらずの赤い鱗を、 必要以上に、こちらへと見せている。 仕方なくいくつかパン屑を放り込む。 するとパン屑は、瞬く間に水を吸い込み、不気味な緑の深みへと、 ぼろぼろとその身体を融かしながら沈んでいく。 眠りつく、ような仕草で、 それをくりかえして、くりかえして、パン屑が最後のひとつになっても、 赤い魚は、その赤い鱗を見せつけたままでいる。 帰ろう、と思い、 だいじょうぶだよと、最後の一言を落として、一片の波紋をたてた。 眠りにつくころには、その赤い鱗は、色を無くしているだろうから、 だから、とりあえずはぼくが預かっておくよ。 夕陽のように赤い、その鱗を、残らずすべて。
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