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わたしの住んでいる町の片隅には 薄汚れたかたつむりのような形の図書館が建っている 入口にはゲート型センサーが設置されており 通過するときには毎回緊張する 何も盗んでなどいないのに 中に入ると書棚がビルディングのように 規則正しく屹立しており それぞれの間にいろいろな人が挟まっている 香水と汗と埃とがまじりあい なんだか懐かしいにおいがする 痩せた女の子が痩身についての本を読んでいた きっと家にある鏡がみんな歪んでいるんだろう 枯れ枝のような細い腕 その後ろで猟奇犯罪についての本を読んでいる男性は 優しそうなサラリーマンで ほほ笑んだ口は奇妙に真赤だ 何を食べて生きているんだろう そういう風に食べることばかり考えているから わたしの口は つむじの辺りにもう一つある 図書館は静かで たまに聞こえるのは 本が人の膝の上ではばたく羽音と そこここで洩らされる溜息くらいしかないから いつもは隠していることが露呈してしまうことがある 帽子を食い破って頭の口が牙を剥く それを必死に抑えているわたしを どこからか現れた子供が見ている 子供の口は縫い合わされている 喋ってしまわないように お母さんが木綿糸で縫いつけたのだと思う 箱のような構造の机に座って勉強している受験生が 次々に入ってくる 膨大な量の知識に耐え切れなくなったのか 床に倒れて ピーーーーーーーーーーーーー と音を立てて なかなかに混沌としているのだが カウンターの中の人は何も気づかないふりをして パソコンをカタカタいわせている いや カタカタ言っているのはカウンターの中の人だ パソコンの配線とおへその辺りが繋がって 何も考えられないような顔をしている とりあえず二冊借りて図書館を出た 外は太陽が昇りきった真昼で 水銀のようにぎらぎら光る空 歩いている人が次々と焦がされ 影法師として路上に焼き付けられていく
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