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X月Y日 部屋の四隅に鳥の雛が堆積しているような気がする。 なにかたべさせてやろうと外へ出て、とりあえず掌に山盛り、虫をとってきた。 口笛を吹いて誘ってみる。 しかし雛たちは、ちち、とも動かない。 よく見ると動かないはずである。 鳥の雛と思ったのは、まるく照っている陽射しだった。 いのちのような色をしているから、つい見紛ってしまうのである。 このごろそういったような見間違いが増えた。 掌中をまじまじ眺めると、虫だと思ってむしりとってきたのは、アルミ缶のプルトップだった。 腐った飲み物が指にべっとり付着している。 痛い。さびしい。 X月YY日 誰かが夜にわたしの右腕を盗んでいった。 朝になると腕はきちんと二本、つながっていたのだが、何故か両方とも左腕になっている。 やりづらくて仕方がない。 署名をしようとすると、腕がむやみに震える。 X月YYY日 来月のカレンダーをめくってみたら、1日からではなく、0日から始まっていた。 しかも0日の日付の下に、わたしではない人の字で、『米買いに行く』と書いてある。 ふざけるな。わたしはパン食だ。 しかしその日がくるのが怖くて仕方ない。 米を買いに行かなくてはならないのだろうか。 X月YYYY日 朝、洗面所の蛇口から生卵が出てきた。3つ出てきたから、目玉に焼いてパンで挟んで喰らった。 サラダオイルで焼いたのに、なぜか濃厚なバタの味がした。 なんの卵なんだろう。 X月YYYYY日 ここ数日、寝ようとすると枕元で小人が踊る。祝日でもないのに。 わたしの知らない間に、なにかが始まっているのだろうか。 X月YYYYYY日 おぼえていたはずの、かんじを、わすれてしまった。 きょう、いちにちだけだ、とおもうが、しんぱいだ。 X月YYYYYYY日 写真が一葉送られてきた。 知らない家族が映っていた。 海パンを履いて笑っている男の子の下に、 ↑あなた と書いてある。 わたしは女なのに。 しかし後ろを向いて納得した。 なぜならば、写真と同じ男の子を、いつの間にかわたしはおぶっていたからである。 けたけたけた、とあおじろい顔で笑う男の子は、むしろ愛しいもののように見えた。 X月YYYYYYYY日 男の子はいなくなってしまった。その代わりとでも言うかのように、引き出しの中に頭の青いマッチがたくさん詰まっていて、開け閉めするたびにばらばらばらばら零れ落ちてくる。 それを見て、あ、もう遠くへ行く時間だと思った。 たしかにそれは合図だった。 歩いて歩いて、行けるところまで行くつもりだ。 電車に乗るのもいいが、小指の爪が長い男に殺されそうな気がするのでやめておこう。 わたしは行く。 もう二度と帰らないつもりだ。 X月YYYYYYYYY日 (日付だけは書かれているが、頁は空白である) (その後も空白の頁が続く) X月Y…日 おまえがわたしを 誰なのか知らないように わたしもわたしが 誰なのかわからない (これを最後に、日記は終わっている) (しとしとしと) (雨が降っている)
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