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・ 算数の時間 たろうくんは時速5キロメートルで 3キロはなれた隣町まで りんごを買いに行きました という問題を読んだとき 手を挙げて先生に質問をした たろうくんは寄り道をしないですか たろうくんは疲れて休んだりしないですか 先生は たろうくんは同じ速さでいつまでも進みます と答えたと思う それを聞いてわたしは 機械の体を持ったたろうくんが がしんがしんと一定の速度で 同じ方向へ進み続ける光景を想像した それからというもの どうも算数や数学を解こうとすると たろうくんががしんがしんと頭の中に現れるので 気が散って問題の答えを出すことが出来ない 想像の中のたろうくんは りんごをひとつだけ買うために いつまで経ってもつかない隣町を目指して がしんがしんと進んでいる 教科書と同じ 縦丸の真っ黒な眼と笑った口を持って 誰とも出会わず えいえんに ・ いくつのときだったか 家庭科の教科書を読んで絶望したことがある 図解付きで 汚れを落とす洗い方が載ったページだった つまみ洗いや こすり洗いなど 様々な洗い方をしている写真の一番端に 七分以上洗っても落ちない汚れは 何をしてももう二度と落ちない というようなことが書いてあって 頭を殴られたような衝撃だった 努力しても出来ないことは絶対に出来ない と宣告されたように思ったのだ 家庭科の先生は優しい女の先生で 聞けばなんでも教えてくれた だけどわたしは そのことについて聞かなかったと思う 困らせるような気がしたからだ その先生が好きだったから 家庭科の授業はいっしょうけんめい聞いていた いっしょうけんめい聞いていたはずなのに 今のわたしは釦付けひとつきり それだけしかうまく出来ない やっぱり 努力しても 出来ないことは 出来ないのかも知れないと思う 絶対に ・ 国語は好きだったが テストの点数はいつも悪かった このときの主人公の気持ちを40字以内で答えよ という問題なんかに 私は主人公でないのでわかりません。 でも、かなしかったかもしれません。 とか書いていたからかもしれない 国語の先生は萩原朔太郎が好きで 息子に朔太郎という名前をつけたと言っていた すべて書き終えたテストの余白に よくわたしは さくたろうちゃん という題名で男の子の顔を描いていた その顔にいつも先生は花丸をつけてくれた もうすこしまじめにもんだいをとこうね というメッセージ付きで 一度 作太郎ちゃん という文字を当てたら ×がしてあって 朔太郎です と訂正してあったこともある 今でも 陽のあたる午後 萩原朔太郎の詩集を 読んでいるときなんかに思い出すのだ あの国語の先生と 見たこともないさくたろうちゃんのことを 思い出しながら微笑んで あれから二十年くらい経つんだと思う 想像の中の先生はいつまでもとしをとらない 先生がもしわたしを覚えていたら きっと先生の想像の中でも わたしは永遠に六歳の ぶすくれた顔をした女の子のまんまだろうと思う
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