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・ 夕暮れ前 遠くにかすむネオンの灯は 空想の世界の動物のようだ 泣いてるみたいに点滅して 消えそうなくらい風に揺られて 幼いころ空想で作り出した王国が 地平線の果てで滅んでゆくところを 否応なく見せられているみたいだ なんて静かなのだろう なんとなく 世界の終わりというものも これと似ているような気がする 真っ暗になって なんにも見えなくなって さよならをいう暇すら きっと与えられなくて ・ バレンタイン用に包装されたチヨコレイトを 買って胸に抱きながら帰った わくわくしながら箱を開けると 腐乱死体みたいになっていた 心臓を模したというハートの形は すでにどこにも見当たらない せつながりながらも でろりとしたそれを 指につけてしゃぶってみる 遠い昔だれもがそこで 泥遊びをしていたであろう 母の体内みたいな感触だ 食べ切れなくて捨てるとき ものすごく痛々しい気持ちになった わたしは臆病者だから きつく眼をつぶって 見ないふりをした がさり と音がして たぶんわたしも含めて この世のものはきっと全て こんなにもたやすく捨てられてゆく ・ 君の声が わたしの耳に届く途中の地点で 鳥の形に変わって 空へ羽ばたいてゆくのを見た だからわたしには 君の声はぜんぜん聞こえないんだけど 次々に飛び立ってゆく その鳥の色や並び方や羽ばたきの回数で 何を言いたいのかはだいたいわかるよ 言おうとしたわたしの声も 小鳥になって羽ばたいてしまう もうずいぶん前からこんな風だ 君の声の高低や波長はとうの昔に忘れてしまった 微笑むと同時に唇を噛む 苦い血の味 現実の重み せつないいたみと空の青さ 歯と同じような白さの雲が 頭上をゆっくり通り過ぎる 君が手を振って 鳥が空でくるっと回って 交尾をしてて その光景はずいぶんと美しい まったく 馬鹿みたいなほどに美しい
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