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この皮肉によくアイロンがけすれば もしかすると金言になるかもしれない そう思って捨てずにとっておいたら いつの間にか押入れは皮肉で いっぱいになっていた 皮肉な話だ 女房はワイシャツのアイロンがけは してくれるけど 溜まりに溜まった皮肉については 私のやることじゃないから と こうして皮肉は溜まる一方だ 溜めなきゃいいじゃないか とは思うのだが 類は友を呼ぶ とでもいうか ネズミ講の態で皮肉は 集まってしまう 溜めるばかりで放っておくと やがて皮肉は嫌なにおいを 放ちはじめるから 注意しなければならない いや 必ずしもそうではない かもしれないけど よく聞く話では ある 夕べ 食卓の席で女房は そろそろあの皮肉の山を 何とかしてくれない と 視線をテレビに向けたまま 言った 僕は全く気が付かなかったが 多分押し入れの皮肉が 嫌なにおいを 放ちはじめたのだろう 古い皮肉は 自分でアイロンがけするしかない とは思うのだが 僕にはどれから アイロンがけすべきなのか 皆目見当がつかない かつては親しい友人に 皮肉を押し付けたりもしたが この歳でそんな真似はできない そこで 僕の黄色いコザクラインコに 皮肉をあてがってみた だが彼女(僕のコザクラインコはメスなんだ)は眼前の クシャクシャの皮肉には目もくれず 僕の肩に留まって鳴きだした 仕方なく彼女をカゴに戻す 彼女はきょとんとした表情で 次の放鳥を待っているけど 僕はまず この皮肉の山を なんとかしなければならない 次に 僕は近所のクリーニング屋に 電話してみた しかし皮肉と口にするや否や 高台の上にある家までの 出前みたいに断られた どうやら 僕は今まで随分女房に我慢を 強いていたらしい 次に 僕は親しい友人達に電話してみた おまえ皮肉をどうしてる? その場で捨てるって奴もいれば 喰っちまうって猛者もいた 倉庫を借りてしまってるって奴もいれば なんだそれは という聖人もいた その場で捨てるのが 現実的かもしれないが それで街を汚すのも忍びないし 多分皮肉は消化に悪い 倉庫というのは ステキなアイデアだが 不精な僕は管理を怠るだろうし 聖人なんてもってのほかだ 次に 僕は現実逃避を試みることにした まだこの皮肉の山は におっていないかもしれない 古いやつを着込んで ちょっと街に出てみる 自意識過剰なんて もう過ぎた話のはずだけど すれ違う人々の視線は 僕に向けられているようだ クシャクシャなのが 人目を引くのではなく 古い皮肉の放つ 饐えたにおいが嫌悪感を 催させるのだろう そそくさと家に戻る 女房はワイシャツに アイロンがけしている 皮肉を脱ぎ捨て 僕は部屋に籠もった 天井を見上げながら 皮肉の山をどうするか考える 天日干しにするか いやご近所の目が気にかかる その辺に捨てちまうか いや不法投棄で処罰されかねない 宅急便で実家に送るか いや両親にこんなもの預けられない 質草にしちまうか いや預かり拒否が関の山だろう… そんな自問自答を 繰り返しているうちに 表は暗くなり 明るくなり 女房はいつしかいなくなり インコは僕になつかなくなり 押入れには皮肉だけじゃなく今じゃ ワイシャツまで溜まりはじめた しぶしぶ部屋を出て僕は ワイシャツのアイロンがけを 始めたけれど 肝心の皮肉にまではなかなか 手をつけられない まったく皮肉な話だ
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