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野良猫に餌をやる女のことが好きだ。栗色の長い髪の毛よりも傷だらけの左腕に惹かれている朝に気付いたのは僕だけだろう。なによりも、4ブロック先の集合住宅の西側の壁から匂うクッキーの香りが僕らの憧れのシンボルであった。 テレビの中では兎の司会者がいつまでも歯笛の練習をしている。 バスルームに取り付けられた換気扇のファンが外れたのはきっと天使か烏か蜻蛉のせいだと決め付けてしまうのはまだ早いだろうと僕は感じた。そして感じることを考えることで思考が混乱してしまうことに辿り着いた僕は舌足らずを恥じない生き方を選ぶことになった。 神様は桃をかじりながら微笑む、母親のエプロンの味がする。 金属でできた、右手の指がいくつか足りなくなっていたのでホームセンターまでボルトを買いに行く必要があるかもしれない。それとお月様に住んでいるのはトナカイではなくてヘラジカだ。ヘラジカは世の中の悪いことをせっせとソリに詰め込んでカリブ海まで旅をする。 夕食にハムエッグが出てしまったらその日はやり直しがきくのだろうか。 僕は水色の子犬がこの公園をひとりで歩いているのを見ることが嫌いだった。そしてそれ以上にその子犬を罵る大人たちの甲高い笑い声がだい嫌いだった。一生懸命を馬鹿にするなと幼稚園のときに教わったことを覚えていたい。 クリスマスツリーをしまわなければ恐らくサンタが毎晩僕の枕元にやってきて、靴下の中に隠した願いを全て残らず叶えてくれるだろう。 僕は猫に餌をやる女の幸せを願い、換気扇のファンにぶつかった誰かが怪我なく空へと舞い戻ってくれることを願い、冬の公園にやってくる白鳥のための巨大ヒーターを願い、新しいニューヨーク市長にホルスタインのニーナが当選してミルクの安売りを始めることを願い、働きすぎのヘラジカのために長いバカンスが計画されることを願い、ひとりぼっちの青い子犬に友達ができることを願い、全ての大人たちが一生懸命を覚えてくれることを願い、僕の真ん中を貫く気持ちが当たり前の人間と同じ真っすぐなものになりますようにと願い、8歳の秋にできたはずの掛け算が62歳の僕にもできますようにと願い、飲酒運転のトラックに轢かれて死んだ大好きだった叔父さんのために冷えたビールをショピングカート一杯分願い、もうこれ以上生き物が誰も死なないようにと願い、願うたびに寂しくなっていく心の隙間を埋めるためにこの昼寝が上手くいきますようにと願い、 甘いクッキーの匂いを探している。
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