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本文
クリームで前が見えないけれど 世界には青が降っている 炭酸を抜かないで 誰かの声を聴いた僕は夢中になって世界を振った * 勢いよく噴出した青を二人の子供が飲んでいた 子供たちは夢中になって飲んでいた さよならブルー 北十字から南十字まで転がっていったブルー 静かに眠る子供たちに青が近づいていくから 子供が神さまになって 世界はもう少しだけ優しくなれるようにした 星の場処なんて誰も知りやしない 青よりも青い場処に立って僕は目を閉じた この町の青は透明に近い青だと思った アンタレスを観測する場処は既に閉鎖されてしまっていて どれがアンタレスかわからなくなっても この青い町から見えるのは綺麗な赤だった もうすぐ秋になるのだろう 冬になれば青にかわって白がくる 青い空から青い雨が降るので 僕は目を閉じた 僕から抜けていったのは炭酸ではなくて 愛している と云う言葉だったのかもしれない * あの日の帰り道に友人がクリームに溺れて死んだ そう聞いたのは数週間が経った日のことだった 天国から降ってきているかのようなどしゃぶりの青のなかで 僕は二人の子供がかわらずにそこにいたのをただ眺めていた その次の夜もまた次の夜も ソーダはたえることなく降り続けて 二人の子供はずっと クリームに溺れながらソーダを飲んでいた * 隣町の女が妊娠したらしいと誰かが言った あたらしい あたらしい何かが宿ったのだから世界も 僕も何か変わるのだろう いつからか僕もクリームにまみれていた * 炭酸が目にしみると子供が言い出したのは今年に入ってからだ 炭酸が目にしみることを知ったのはいつからか 僕はいつの間にかそういうものだと覚えていた 炭酸は目にしみる 生まれてくる子供の目にもいつか炭酸が目にしみる日がくる 僕はそう思った 生まれてくる子が男か女かなんてのは些細な 本当に些細な問題で どうにもならないと言うのなら目を閉じれば良いだけだ そして夢を見よう あたらしい あたらしい夢を見よう そして全部忘れてしまわないか * 子供たちが去っていったのは僕の生まれた日 新しい世界の誕生もまたその日の朝だった クリームが少しばかり多めに降っていたから目は赤くなっていた 青い世界で赤い瞳が遠くの遠くの空の向こうを見ていると 無数の星屑が落ちていく ガラスの水車が時々まわって微かにクリームを混ぜている 自分にはそのクリームで前が見えないから 世界には青が降っているかどうか教えてくれと女は言った 炭酸を抜かないで 誰かの声を聴いた僕は静かに青を川に流した * 世界には青が降っている クリームで前が見えない
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