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本文
水の上の火 空の姿か 底の姿かわからぬまま ひとり ほどける 風 息 原へ 去るを見る 砕けるを見る 散るを見る 傘をたたむ 遅い夜の色 ひとつやわらかな 人わすれ人 滴をぬぐう手 黒と異の粒 ぬぐいきれない空の針 生まれつづける緋のにおい よく似たものが歩いてゆく 今もどこかを歩いている 帆の醒める音 醒める音 いつか再び会えるのだろうか 頂きの痛み 曇間の声 眠りの失いまたたき 冬の遊具 鬼火 吹雪が吹雪を追い 街をすぎる 多くの色が流れ落ちてゆく 低いところ さらに低いところ 多くの 深い扉 雨は風になり 風は内に入り込む どんなに狭い隙間からも 風は風に入り込む 似たものの群れが 傘をさしては通りをゆく 暗がりに立つ音 光をそっと押しのける音 雨のなかを流れるものが 幽かに色を伝え来る 閃くものの巨きさに 幾度も幾度も立ちどまりながら おまえが讃えるあの色は 必要のない色なのだ 花を忘れ 葉を忘れ 光を合成せて 静かな容れ物が はじかれた緑に満ちてゆく 樹を昇る音 落ちる音 境へ境へ鳴りわたる
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