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引越しの準備をしている 朝から晩まで 陽のよく当たる部屋に座って 要るものと要らないものとを仕分けし始めて もう三日が経過した 作業はぜんぜん進まない なんだか百年くらい前からこうしているような そんな気がしてきた だいたいわたしは 必要なものと不必要なものの区別がつかないのだ 持っているものはほとんどがガラクタだし 小箱はたくさん持っているけど 中に入っているのは 錆びたコーラの王冠と使用済み切手 それと子供のころからずっと持っている シルバニアファミリーの人形のかわいい首 たったそれだけである 意味や機能を失ったものどもは安らかだ そういうものに囲まれて眠るのが好きなんだ どうしても捨てることができなかったので 外へ出て土に埋めてお弔いをした さよなら 昔すきだったひとの結婚式の招待状が 冷蔵庫の奥に押し込まれていたため ひっぱりだして灰皿の上で燃やした 乾いた紙片は 意外なほど勢いよく燃えた きっと忘れたかったのだろう あのとき 結婚式であのひとが こっちを見てどんな風に笑うか 想像したしゅんかん吐き気がきて ずっとげえげえ吐いてばかりいた それで あのひととの間に授かった子は いともたやすく流れてしまった 想像妊娠だった うらんではいない 少し寒い 毛布を探したけど 布団のたぐいはきのう 箱に詰めて封をしてしまったんだった 探してみたけれど どの箱にしまったんだったか とりあえず適当な箱を開けてみると やわらかいものが箱いっぱいに くってりと折りたたまれて入っていた 夫だった 寝癖をなおしてやってから もとどおり隙間なく封をした ガムテープを買いに部屋を出る ひんやりとしたいい夜である 月なんか怪物の目のように あんなに黄色く光っていて きっとこんなふうにずっと生きていくんだろう 風はどこか遠くの 海のにおいをはらんで
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